Q4:漢方薬とは?

漢方治療では、薬効を持つ植物や鉱物などの生薬を使って病気の治療を行います。民間療法のように一つの症状に対処する目的には通常は一種類の薬草だけで十分です(便秘にセンナ、下痢にゲンノショウコ、吹き出物にドクダミなど)。

しかし、病気を治療するためには、 一種類の生薬だけでは薬効に限界があります。病気の状態や患者の体質に合わせるためには複数の生薬を組み合わせる薬を作る必要があります。また、複数の生薬を組み合わせることにより、それぞれの生薬の副作用を軽くしたり、効果を相乗的に高めることができます。治療のために複数の生薬を配合した漢方処方を「漢方方剤」あるいは単に「方剤」ともいいます。

西洋薬と漢方薬の考え方の違い:

西洋医学もつい100年程前までは、主として天然物を薬として用いていました。しかし、再現性と効率を重んじる近代西洋医学では、作用が強く効果が確実な薬が良い薬であるという価値観に基づいて、単一な化合物の中に特効薬を求める方向で薬の開発が行われてきました。経験的に薬効が知られていた薬用植物から活性成分を分離・同定し、構造を決定して化学合成を行ない、さらに化学修飾することによってさらに活性の強い物質を薬として開発してきました。近代西洋医学では病気の原因に直接働きかけて、それを取り除くことによって病気を治療することが基本になっています。作用の強い薬は、体のバランスを一方向に傾けたり食欲や胃腸の働きを障害して、体の自然治癒力を低下させる傾向にありますが、病気の原因に直接作用することを優先するのが西洋薬の考え方です。

一方、漢方では、絶えず体全体のバランスを考えながら、自然治癒力を妨げないで、生体の諸々の機能の歪みを是正するような作用を薬に求めてきました。体の自然治癒力や抵抗力に働きかけて間接的に病気を治していこうと考えています。西洋薬のような特効的な効果はなくても、副作用がなく病める体に好ましく作用する薬、長期の服用が可能で徐々に治癒力や体力を回復させる薬を大切にしてきました。天然の生薬を組み合わせることにより、特定の薬効を引き出し副作用を少なくする知識を長い歴史の中での臨床経験から蓄積してきました。このような複数の天然生薬の組み合わせからなる漢方薬は、多種類の成分が含まれており、それらの成分間の相互作用が複雑であるため科学的な解析や作用メカニズムを明確にすることは極めて困難です。天然の薬は成分が一定しないという点や、薬の効き目に個人差が出るなど、再現性や普遍性を追求する科学的な理論医学の立場からは認めにくい薬とも言えます。

感染症などのように、病気の原因を直接攻撃できる場合には、西洋薬のように即効的で強力な作用を持つ薬は、極めて有効です。しかし、生体機能の異常によって発症する病気に対しては、生体の異常状態を無理やり正常な方向に傾けるような薬剤のみでは、症状は軽快しても必ずしも根本的な原因治療にはつながりません。このような薬はかえって自然治癒力を妨げていることが多いことを理解しておく必要があります。

漢方薬の秘密は生薬の複合効果にある:

漢方治療では、一種類の生薬だけを使用することは稀で、多くは病気の状態に合わせて複数の生薬を組み合わせて処方されます。これによって、患者の呈する体の異常や症状に対処でき、また効果をより高め、かつ副作用をより少なくすることができるのです。このように、治療のために複数の生薬を配合したものを漢方薬あるいは方剤といいます。

単一の成分は、作用が偏っていて副作用などが現われやすい傾向がみられます。生薬には多くの成分が含まれていて、相互に助長し合い、あるいは抑制し合うというように、常に調和を保つような傾向がみられます。しかし、単味の生薬には、なおその薬能に限界があり、効き目に片寄りがあります。そこで、単味の生薬をいくつか組み合わせた薬方がつくられることになります。すなわち、漢方薬は、単味の生薬の弊害と不備とを補い、さらに特殊な薬効を重点的に抽出して効果的に利用することを目的としてつくられたものといえます。

漢方治療の長い歴史の中で優秀な処方が伝えられ、独自の名前(葛根湯、小柴胡湯など)が付けられて現在も使用されていますが、この伝統的な方剤構成をそのまま使用したり、あるいは病気の状態に合わせて別の生薬を加えたり減らしたり(加減という)して薬を作ります。独自に生薬を選び、組み合わせて治療に使用することもあります。しかし、単に症状に合わせて生薬を混ぜ合わせたのでは、効果が相殺したり副作用を強める可能性もでてきます。生薬の作用をうまく引き出して、薬の副作用を軽減させるために、生薬の知識と理論が必要になるのです。

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