Q5:「煎じ薬」とはどのようなものですか?

煎じ薬とは生薬に含まれる様々な有効成分を熱湯で抽出した内服用の水剤(のみ薬)のことです。生薬に含まれる成分をお湯で煮出すことを「煎じる」といい、刻んだ生薬(キザミ生薬)を煎じて、生薬の成分を煮出したスープ状の液を「煎じ液」といいます。具体的には、おなべややかんなどで1日分ごとに分包してある漢方薬を水から火にかけ、煮詰めたのちに煎じかすを取り去った煎じ液を1日に2−3回に分けて空腹時に飲むことになります。本来の漢方薬はこのようにして、キザミ生薬を煮出した煎じ薬として服用します。

煎じ薬は面倒だという先入感がありますが、実際に試してみるとそれほど手間はかかりません。一般的な煎じ方を以下に示します。

【キザミ漢方薬の煎じ方】(図参照)

煎じる容器に関しては、生薬類は鉄や銅と化学反応を起こして成分が変化する可能性があるので、基本的には鉄や銅で作られたものは避けます。それ以外であれば、特に気にする必要はありません。耐熱性ガラスやほうろう鍋や土瓶など、ガラスや陶器製のものが適しているようです。

キザミ生薬の一日分に、3合程度(約500ml)の水を加えて火にかけます。煮え立ちそうになったら火を弱くしてコトコトと煮ます。時間は30〜45分で、量がはじめの半分くらいになるのが目安です。早く煎じたいからと湯を加えたり、強火で煮ると、せっかくの成分が全部出きらず損をすることになります。水からじっくり煮出すようにすることがポイントです。薬を煎じ終えたら熱いうちにカスを捨てます。カスを残しておくと、せっかくの成分がカスに再び吸収されてしまうからです。飲める温度になったところで1日に2〜3回に分けて食前に飲みます。

漢方薬は栄養分の多いスープのようなものですから、2日以上室温に放置しておけば細菌やカビが増殖する(腐る)危険もあります。その日の内に飲みきれない時には冷蔵庫に冷やして保存します。煎じる時の水の量は約3合(コップ3杯)が目安ですが、がんの漢方治療では生薬の量が多くなることがあり、その時は水の量を増やしても構いません。通常は生薬の重さの20倍量が目安です。日本で処方される漢方薬の1日量は概ね20〜30グラムですから水400〜600 mlが標準で、これが半分になるまで煮詰めると1日に飲む量が200〜300 mlとなって飲みやすい量となります。がんの漢方治療では1日に100グラム以上になることもあります。生薬の量に対して水の量が少なすぎると有効成分を十分に煮出すことができませんが、煎じ液の量が多いと飲むのに大変です。生薬の量に応じて飲める範囲で水の量を増やしたり、1日3回以上に分けて飲むとかの工夫が必要になる場合もあります。

耐熱ガラスポットとタイマーのついた温熱器がセットになった自動煎じ器も売られており、漢方専門の薬局で手に入ります。最近では、大量の生薬を一度に煎じることのできる自動煎じ器を用いて、数週間分の煎じ液をレトルト食品のようにアルミの袋に分包してくれる薬局や病院も出てきました。この方法だと、煎じ液として数週間は問題なく保存できるようです。このような煎じ薬のレトルト分包は今後一般化してくるようですので、煎じる時間がないとか煎じる時の臭いが問題になる人にも、煎じ薬が身近なものとなりつつあります。

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