半枝蓮 (はんしれん) Scutellaria barbata

半枝蓮 (はんしれん)は学名をScutellaria barbataと言う中国各地や台湾、韓国などに分布するシソ科の植物です(右写真)。
アルカロイドやフラボノイドなどを含み、抗炎症・抗菌・止血・解熱などの効果があり、中国の民間療法として外傷・化膿性疾患・各種感染症やがんなどの治療に使用されています。
黄色ブドウ球菌・緑膿菌・赤痢菌・チフス菌など様々な細菌に対して抗菌作用を示し、さらに肺がんや胃がんなど種々のがんに対してある程度の効果があることが報告されています。
漢方治療では、清熱解毒・駆お血・利尿・抗菌・抗がん作用などの効能で利用されています。半枝蓮の抗がん作用に関しては、民間療法における臨床経験から得られたものが主体ですが、近年、半枝蓮の抗がん作用に関する基礎研究が発表されています。これらの基礎研究では、半枝蓮には、がん細胞の増殖抑制作用、アポトーシス(プログラム細胞死)誘導作用、抗変異原性作用、抗炎症作用、発がん過程を抑制する抗プロモーター作用などが報告されています。
さらに最近は、人間での臨床試験も実施されるようになりました。米国では進行乳がん患者に対する半枝蓮の効果が検討され、有効性を示唆する結果が得られています
半枝蓮の抗がん作用に関する最近の研究を以下に紹介します。

Pheophorbide a, an Active Component in Scutellaria barbata, Reverses P-glycoprotein-mediated Multidrug Resistance on a Human Hepatoma Cell Line R-HepG2.(半枝蓮に含まれる活性成分の1つであるPheophorbide aは、ヒト肝細胞がん細胞株のR-HepG2におけるP糖蛋白質依存性の多剤耐性を解除する) Tang PM, 他(香港大学生化学) Cancer Biol Ther. 6(4) :504-9
(要旨)半枝蓮は中国では古くから肝臓疾患に利用されている薬草である。この研究では、半枝蓮の活性成分の一つであるフェオフォルバイドa(Pheophorbide a)の抗腫瘍効果を、多剤耐性の性質をもったヒト肝臓がん細胞の細胞株であるR-HepG2細胞を用いて検討した。
フェオフォルバイドaを培養液に添加するとR-HepG2細胞の増殖を著明に抑制し、48時間後の50%増殖抑制濃度は25μMであった。
多剤耐性の性質をもっていないHepG2細胞と比べて、多剤耐性のR-HepG2細胞に対しても同じような抗腫瘍効果を発揮した。フェオフォルバイドaのがん細胞の濃度はHepG2細胞とR-HepG2細胞で差は認めなかった。
興味深いことに、
フェオフォルバイドaを添加すると、P糖蛋白を多く発現しているR-HepG2細胞のP糖蛋白の蛋白量と遺伝子発現量(メッセンジャーRNA量)は減少し、P糖蛋白の活性は低下した。
さらに、フェオフォルバイドaは
肝臓がん細胞の増殖をG2/M期で止め、細胞増殖を制御するcyclin-A1 やcdc2 の発現を用量依存的に抑えた。
Induction of G1 arrest and apoptosis by Scutellaria barbata in the human promyelocytic leukemia HL-60 cell line.(前骨髄球性白血病細胞株HL-60に対する半枝蓮の細胞周期のG1期での停止とアポトーシスの誘導)
Kim EK, 他(韓国、Chonbuk National University(全北大学)医学部、生化学)Int J Mol Med. 20(1):123-8. 2007
(要旨)がん抑制遺伝子p53の変異を持つ前骨髄性白血病細胞HL-60に対する、半枝蓮抽出エキスの抗腫瘍効果のメカニズムを検討した。
HL-60細胞を培養する培養液に半枝蓮抽出エキスを添加すると、HL-60細胞は、
細胞周期のG1期で停止し、さらにアポトーシス(プログラム細胞死)の機序で細胞死を起こした。その効果は時間と用量依存的であった。(エキスの濃度と、添加後の培養時間に比例して増殖抑制や細胞死が起こった)
細胞増殖を促進する細胞内蛋白質であるサイクリンA,D1,D2,D3,Eやこれらのサイクリンを活性化する酵素であるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)2,4,6の発現は減少し、CDKを阻害しt細胞の増殖を抑える蛋白質のp21は増加した。
このように、
半枝蓮に含まれる成分には、がん細胞の細胞増殖にかかわる蛋白質に作用して、細胞周期を止め、細胞死(アポトーシス)を誘導する作用があることが示された。
Phase I trial and antitumor effects of BZL101 for patients with advanced breast cancer.(進行した乳がん患者に対するBZL101の第1相試験と抗腫瘍効果)Breast Cancer Res Treat. 105(1):17-28, 2007
(要旨)植物治療はしばしば乳がん患者に利用されている。しかし、それらの安全性や有効性を検討した臨床試験はほとんど行われていない。
Scutellaria barbataは、全草を乾燥させたものが漢方薬の半枝蓮(ハンシレン)として知られている。その熱水抽出物からなるBZL101の安全性と有効性を評価する第1相臨床試験を、進行乳がん患者を対象として実施した。
この第1相試験に参加したのは、
抗がん剤などでの治療歴がある、転移を有するステージ4の進行乳がん患者21人で、平均年齢は54歳(30〜77歳)であった。患者は半枝蓮の熱水抽出エキスを1日350mL服用した。それ以外の抗癌剤は使用せず、病気の進行または毒性が見られるか、患者が希望した場合にのみ投与を中止した。
この試験では、グレード3または4の有害事象はみられなかった。
グレード1または2の有害事象として多かったのは、吐き気(38%)、下痢(24%)、頭痛(19%)、鼓腸(14%)、嘔吐(10%)、便秘(10%)、倦怠感(10%)などであった
16人について反応が評価でき、
4人(25%)は90日を超えて病態安定(stable disease)、3人(19%)は180日を超えて病態安定と判断された5人の患者は客観的な腫瘍の縮小(objective tumor regression)がみられた、1人は部分奏効(partial response)と判断された
培養細胞を用いた研究では、BZL101は乳がん細胞にアポトーシスを誘導することが示されている。さらに、この第1相試験で、BZL101の毒性は低く、治療歴のある進行乳がんに対しても、臨床的な抗腫瘍効果を発揮することが示された。
Molecular mechanisms underlying selective cytotoxic activity of BZL101, an extract of Scutellaria barbata, towards breast cancer cells.(乳がん細胞に対する半枝蓮抽出エキスBZL101の選択的細胞毒性活性の分子メカニズム)Cancer Biol Ther. 7(4): 577-86, 2008
BZL101は米国食品医薬品局(FDA)に登録されている治験薬としての名称で、半枝蓮の熱水抽出エキス。BZL101は乳がん細胞を殺すが正常の乳腺細胞には傷害作用を示さない。
正常細胞は、エネルギー産生に主にクエン酸回路(クレブス回路)を用いるが、癌細胞はこれとは異なり、嫌気性解糖系を経て生産されるエネルギーに多くを依存している。培養したがん細胞にBZL101を添加すると、培養液中に蓄積する(がん細胞から産生される)乳酸の量が減少し、ATPが枯渇する。つまり、
BZL101は嫌気性解糖系を阻害し、癌細胞をエネルギー不足に追い込む。これにより癌細胞には細胞死が起こるが、正常細胞はほとんどダメージを受けない
A phase 1B dose escalation trial of Scutellaria barbata (BZL101) for patients with metastatic breast cancer. (転移した乳がん患者に対する半枝連エキスBZL101の第1B相臨床試験) Breast Cancer Res Treat 120(1): 111-118, 2010
抗がん剤抵抗性で転移のあるステージ4の進行乳がん患者を対象に半枝蓮抽出エキス(BZL101)を検討した。効果を評価できた14人中3人(21%)は120日を超えて病態安定(stable disease)で、このうち一人は700日を超えて病態安定が続いている。3人の患者は客観的な腫瘍の縮小(objective tumor regression)がみられた。
半枝蓮に含まれる抗がん成分として以下のような報告があります。
ENT-clerodane diterpenoidsはがん細胞に対して著明な殺細胞活性を示し、その50%増殖抑制濃度は3.1〜7.2μMであった。(Planta Med. 73(11):1217-1220.2007)
Phytol, wogonin, luteolin, hispidulinが抗腫瘍成分として同定された。(Phytother Res. 21(9):817-22. 2007)
Luteolin(ルテオリン)ががん細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導する。
(ルテオリンは紫蘇に多く含まれるフラボノイドの一種で、抗酸化作用や抗がん作用が報告されています。半枝蓮はシソ科の植物なので、ルテオリンが多く含まれているようです)Ann N Y Acad Sci. 1095:598-611. 2007
scutellarein, scutellarin, carthamidin, isocarthamidin, wogoninが抗腫瘍成分として報告されている。J Agric Food Chem. 53(21):8197-204. 2006
○3種類のneo-clerodane diterpenoid (barbatin A-C)、neo-clerodane diterpenoid nicotinyl ester (scutebarbatine B)が培養がん細胞に対して殺細胞活性を示し、その50%増殖抑制濃度は3.5〜8.1μMであった。(Phytochemistry 67:1326-1330, 2006)
その他、多数のneo-clerodane diterpenoidアルカロイドが抗腫瘍成分として報告されています。

【半枝蓮と白花蛇舌草の併用について】
民間療法としては、半枝蓮白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)と一緒に使用されることが多いようです。
白花蛇舌草(Oldenlandia diffusa)は本州から沖縄、朝鮮半島、中国、熱帯アジアに分布するアカネ科の1年草のフタバムグラの根を含む全草を乾燥したものです。 
肝臓の解毒作用を高めて血液循環を促進し、白血球・マクロファージなどの食細胞の機能を著しく高め、リンパ球の数や働きを増して免疫力を高めます。各種の腫瘍に広く使用され、特に消化管の腫瘍(胃がんや大腸がんなど)に対しては比較的よい治療効果が報告されています。脂肪肝やウイルス性肝炎やアルコール性肝炎などの各種肝障害で傷ついた肝細胞を修復する効果もあり、飲み易く刺激性が少ないので、中国では白花蛇舌草の含まれたお茶や煎じ薬はがん予防薬として人気を呼んでいるそうです。
台湾や中国では古くから
消炎、排膿、解毒、殺菌作用、ヘビによる咬傷を治すなどの効能で、白花蛇舌草と半枝蓮が民間薬として使用されています。さらに、胃がん、大腸がん、肝がんなどの消化器系がんや肺がん・子宮がん・乳がんに対する効果も指摘されて広く使用されています。
白花蛇舌草と半枝蓮のがんに対する有効性は経験的なものですが、この2つの生薬の抗がん活性に関する科学的な研究も行われており、動物実験で抗腫瘍効果が報告されています。
肝臓がんを自然発症するマウスに投与すると、がん化の進展を抑えて寿命を延ばすことが報告されています培養がん細胞を用いた実験で、ヒトの乳がん細胞や前立腺がん細胞の増殖を抑える効果も報告されています。長期間の投与でも有害作用は認められていないため、がん再発のリスクが高い場合の予防的な投与や、がん発見当初より服用する価値があると報告されています。
米国カリフォルニアのロマリンダ大学医学部の細菌学のWong博士らは、
半枝蓮と白花蛇舌草を投与すると、マウスに移植した腎臓がん細胞(Renca細胞)の増殖が抑制され、その作用メカニズムとしてマクロファージが活性化して腫瘍の増殖を抑制することを報告しています。この報告では、それぞれの薬草の量はマウス1匹あたり1日4mgで検討されており、人の体重に換算すると1日8−10g程度に相当します。また、Wong博士らは、半枝蓮と白花蛇舌草には発がん物質の活性化(変異原性)を抑える可能性も報告しています。
白花蛇舌草の抗がん成分としてトリテルペノイドのウルソール酸(Ursolic acid)とオレアノール酸(Oleanolic acid)が指摘されています。さらに半枝蓮はフラボノイドやアルカロイドなど多くの抗がん成分が含まれています。このような異なる成分の相乗効果で抗腫瘍効果が高まると考えられます。

(白花蛇舌草についてはこちらへ

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