抗酸化剤を化学療法や放射線療法を一緒に使用することは、多くの場合有益と考えられる。しかし、現時点では、3つの例外を考慮しておく(正しいかどうかは現時点では未解決)。
1)フラボノイドはタモキシフェンの効果を阻害する可能性がある。
フラボノイドは植物の広く存在しているので、野菜や果物に多いことになり、これらの食事由来のものまで制限する必要があるのかは、現時点では不明。乳がんの予防には、フラボノイドもイソフラボンのような植物エストロゲン(フィトエストロゲン)も有用となっているが、エストロゲン依存性の乳がんの治療後には、イソフラボンのようなフィトエストロゲン活性をもったサプリメントは控えたほうがよいかもしれない。抗エストロゲン剤(タモキシフェンなど)を使用しているときは、フラボノイド製剤は控える方がよいかもしれないが、野菜や果物まで制限するのは意味がないかもしれない。これらの天然のものには、フラボノイド以外の抗腫瘍活性成分や健康物質があることを忘れてはいけない。(トピックス4、5参照)この件に関しては今後の研究の進み具合で見解が変わる可能性がある。
2)N-acetylcysteine(NAC)はドキソルビシンの作用を阻害する可能性がある。
がん治療においてNACの有益性は低いので、がん治療にNACを使用する根拠はないと考えてもよいかもしれない。
3)ベータカロテンは5ーフルオロウラシルの効果を減弱する可能性がある。
その機序は現時点で不明であるが、それが明らかになるまでは、5ーフルオロウラシル使用時にはベータカロテンは使用しないほうが無難。
その他の要約:
・天然の抗酸化物質が、生体内で通常のがん治療を妨げる可能性を示唆する証拠はない。
・抗酸化剤の投与は、それが化学療法や放射線療法との併用の有無に拘わらず多くの有益な効果を示す。
・抗酸化剤のサプリメントを摂取している人は、そうでない人に比べて、通常治療によく耐え、体重減少が少なく、生活の質が良くなり、そしてもっとも重要な点は、延命していることである。
つまり、抗酸化剤が抗がん剤のフリーラジカル作用を減弱させるから、抗腫瘍効果を妨げるかもしれない、という考えは短絡的すぎるかもしれない。放射線や抗がん剤によってDNAが少し傷付くだけでがん細胞はアポトーシスを起こし、抗酸化剤がアポトーシスの過程を促進することが報告されている。がん細胞は抗酸化酵素のカタラーゼが少ないので、細胞内に過酸化水素が蓄積しやすいなどの正常細胞との違いもあり、また抗酸化剤は状況によっては酸化剤となって細胞を攻撃することもある。抗酸化剤には単独でもある程度の抗腫瘍効果があることから、単なるラジカル消去剤としての捉え方でなく、抗腫瘍薬としての捉え方も必要かもしれない。いずれにしろ、まだ十分に明らかになっていない点もあるので、今後の研究成果を追っておく必要がありそうです。
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