便秘は体の治癒力を低下させる原因となります。腸内の悪玉菌(メモ参照）は便秘のときに急増します。腸管内に長い間古い便（宿便）が留まっていると、腸内の悪玉菌によってアンモニアや硫化水素やインドールなどの低分子の有害物質が産生されます。悪玉菌が産生する物質の中には発がん物質もあります。

これらの有毒物質は腸管から吸収されて肝臓にいって分解されますが、このような毒素を解毒するという仕事は肝臓にとっては余分な負担になり、肝臓の解毒能や物質代謝能が弱められることになるのです。便秘が続くと体調が悪くなることを多くの人が経験していると思います。

食物繊維の摂取量が少ないと大腸がんを初めとして幾つかのがんの発生頻度が高くなることが知られています。その理由として、食物繊維が食品中や腸内で発生する発がん物質を吸着したり、便の量が増えると発がん物質の濃度が低下し、便通が良くなると発がん物質が腸粘膜と接触する時間が短くなることなどが挙げられています。

リンゴや柑橘類に豊富にふくまれる水様性食物繊維のペクチン類や低分子のオリゴ糖には、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を増やして、腸内環境を改善し免疫機能を高めて抗腫瘍効果を示すことも報告されています。また腸管を刺激して排便を促します。果実を原料とする生薬には、ペクチンやオリゴ糖による腸内環境改善作用や免疫賦活作用も期待できるのです。漢方薬を服用していると排便が順調になることはよく経験します。

便通を良くすることはがんの治療においても大切です。がん細胞からは食欲を低下させたり、痩せさせる毒素も生成されています。これらを処理するのも肝臓です。したがって、便秘を改善することは肝臓の機能を高めて抵抗力や治癒力を高めることにつながるのです。

漢方薬の下剤には、排便を促すだけでなく、血液循環や気の巡りを良くする生薬も含まれています。便から老廃物の排泄を促進すると同時に、気血の巡りを良くし、血液の浄化を促進することは、治癒力を高める上で有効です。