律神経失調とがん

一般に交感神経は活動に適した状態に体の機能をもっていき、副交感神経は活動に備えるための栄養と休養の状態を整える神経系といえます。活動時には交感神経活動が高まり、その結果心機能が高まり、気管支は拡張して呼吸は容易となり、他方消化管の機能は抑制されます。副交感神経が高まると消化管の働きが活発となり、食物の消化吸収が亢進し、心臓などの働きはむしろ抑制され、体力を回復させる体内環境を作り出します。

生体の状況に応じて体内環境を調整し、生体の恒常性を維持する上で自律神経は極めて重要な役割をもっています。そのバランスが取れているときには、交感神経は臓器機能や新陳代謝を活性化することにより治癒力を高め、副交感神経は栄養素の消化吸収と体力の回復を計ることにより治癒力を高めることになります。

しかし、自律神経のバランスが崩れて、過度な交感神経緊張状態に陥ると、末梢血管の収縮により血液循環が悪化し、活性酸素の生成も高まり、消化管機能も異常になって治癒力は低下します。副交感神経の過度な緊張は、内臓臓器の血流や組織の新陳代謝を低下させて、やはり治癒力を損ないます。このように、自律神経系のバランスの異常は、どちらに転んでも治癒力を低下させる原因となり、がんを促進させる要因となるのです(図)。

自律神経系の機能は気の機能とも通じる点が多く、自律神経系の失調は、東洋医学的には気の巡りの停滞(気滞)に相当するといえます。漢方薬や鍼灸治療や気功などによって気の巡りを良くする事は、自律神経の働きを調整して、体の恒常性を維持する仕組みや治癒系を活性化できるので、がん体質の改善やがん予防に有用と言えます。

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