たとえば、慢性の病気に罹って食欲も元気も低下し(気虚)、栄養状態が悪く貧血があり(血虚)、皮膚に潤いがなく乾燥している(陰虚・津虚)ような状態は図のAの場所にあるといえます。この異常状態(病的状態)を改善するためには、気血水のいずれもその量を増やすように補う治療(補気・補血・滋陰)が必要といえます。
逆に、気の巡りが悪くのぼせや腹が張ったりし(気滞)、血の巡りが悪く皮膚や粘膜は暗赤色で(お血)、体液の循環が悪く体のむくみがある(水滞)時には、図のBにあるといえ、気血水のそれぞれの巡りを改善する治療が優先されなければなりません。
この図では表現できませんが、気の巡りが悪く(気滞)しかも量も不足している(気虚)場合もあります。血の量が不足して(血虚)しかも巡りが悪い(お血)場合もあります。このような場合はそれぞれの巡りを改善しながら量の不足を補わなければなりません。気滞と気虚があるときに気の量だけ補うような治療をすることは、川をせき止めてダムの水を放流するようなものであり、病気の状態を悪化させる原因となります。
このように、気血水の量や巡りの異常の状態や程度に応じて、それらを改善するような効果をもった生薬を組み合わせて治療するのが漢方が体の自然治癒力を高めるための理論です。そのような効果をもった生薬が経験的にまとめられその使い方を体系化したのが漢方理論の基本です。