4。納豆、味噌、豆腐など大豆製品に含まれるイソフラボンはガン細胞の増殖を抑制する。

大豆は、昔から良質なたんぱく源として知られ、最近では、健康管理に有効な数々の特効成分を含むことでも話題になっています。ガン予防の分野でも、フラボノイドの一種の「イソフラボン」という成分のガン予防効果が注目されています。

【大豆イソフラボンが乳ガン、前立腺ガン、大腸ガンなどを予防する】

豆腐などの大豆製品を多く摂取している人は乳ガンや前立腺ガンになる率が低いことが、多くの疫学的調査から示されています。さらに、動物発ガン実験の研究で、大豆に含まれるゲニステインというイソフラボンが、乳ガンや前立腺ガンや大腸ガンの発生を予防する効果が報告されています。

イソフラボンは、、大豆のえぐ味を生み出す原因物質として以前から知られていましたが、抗酸化作用や抗腫瘍効果を示すことが明らかになり、大豆のガン予防効果の主な活性成分と考えられるようになりました。

大豆イソフラボンには、エストロゲン(女性ホルモン)と似た働きや、骨からカルシウムの溶出を抑え骨粗しょう症を予防したり、コレステロールを下げる効果や高血圧予防などの効果もあります。

ゲニステインには弱いエストロゲン活性がありますが、動物実験では抗エストロゲン活性(体内のエストロゲンの活性を抑える作用)を示します。みそや豆腐などの大豆製品をたくさん摂取すると血中エストロゲン濃度が減少することも報告されています。このようなエストロゲンに対する影響が乳ガンや前立腺ガンの予防効果と関連している可能性が指摘されています。

大豆イソフラボンには、ガン細胞の増殖を促進するのに必要な種々の細胞内蛋白質に働きかけて、抗腫瘍効果を示すことも報告されています。ガン組織が大きくなるためには、回りに毛細血管をはりめぐらして酸素や栄養成分を吸収しなければなりませんが、大豆イソフラボンにはこの毛細血管の増殖を防ぐ血管新生阻害作用も報告されています。

【大豆製品はガン治療後の予後を改善する】

大豆製品の摂取量が多いとガン治療後の予後(生存期間)が良好であることも報告されています。例えば、877症例の胃ガンの手術後の生存率と食生活の関連を検討した愛知がんセンターからの報告によると、豆腐を週に3回以上食べていると、再発などによるガン死の危険率が0.65に減ることが報告されています。ちなみに、生野菜を週3回以上摂取している場合の危険率は0.74に、喫煙していると2.53になることが報告されています。

Effects of dietary, drinking, and smoking habits on the prognosis of gastric cancer.
(Huang XE, Tajima K, Hamajima N, Kodera Y, Yamamura Y, Xiang J, Tominaga S, Tokudome S.) Nutr Cancer 2000;38(1):30-36

【醗酵させるとガン予防物質が増える】

大豆に含まれるイソフラボンの代表はゲニステイン(genistein)で、これがガン予防効果や抗腫瘍作用を発揮すると考えられています。大豆の中のゲニステインは糖がついたゲニスチン(genistin)という配糖体でも存在し、このゲニスチンは腸内細菌によって糖がはずされてゲニステインとなって腸から吸収されます。

国立がんセンター研究所の福武らの報告によると、大豆の1グラム中にはゲニステインが4.6 〜18.2 マイクログラム、ゲニスチンが200.6〜968.1マイクログラム含まれています。豆腐の場合は、1グラム中にはゲニステインが1.9 〜13.9 マイクログラム、ゲニスチンが94.8〜137.7マイクログラム含まれています。

大豆を醗酵させた食品である味噌や納豆では、1グラム中にゲニステインが38.5 〜229.1 マイクログラム、ゲニスチンが71.7 〜492.8マイクログラムとなっており、醗酵製品では糖がはずれたゲニステインが増えていることがわかります。つまり、ゲニステインの量だけ比較するなら味噌や納豆のほうが良いようです。

これらの値から計算して、日本人平均の摂取量は1日一人当たりゲニステインが1.5-4.1mg、ゲニスチンが6.3-8.3 mgとと推測されています。

Quantification of genistein and genistin in soybeans and soybean products.
(Fukutake M, Takahashi M, Ishida K, Kawamura H, Sugimura T, Wakabayashi K.)
Food Chem Toxicol 1996 May;34(5):457-461

【豆腐にネギ・ショウガの組み合わせでガン予防効果は倍増する】

冷奴にネギやショウガをのせて食べます。この組み合わせは、食品の寒熱の考え方に基づいたものですが、ガン予防の観点からもよい組み合わせのようです。。

東洋における食養生の考え方では、食品には体を温めるものや冷やすものがあるのでそのバランスを取ることが大切であることを教えています。豆腐は「涼」性で体をやや冷やす作用があり、ネギやショウガは「熱」性であるため体を温める効果があります。冷えた豆腐や納豆ばかり食べていると体を冷やす方向に傾いてしまいます。そこで食養生の知恵として豆腐にネギやショウガを付け合せたと考えられます。

豆腐やネギやショウガが癌予防に効果があることは、西洋医学による研究の結果既に証明されています。これら3つを組み合わせることは、ガン予防の効果が増すのみならず、食事の副作用も防いでくれることになるのです。このように中医学の考えや生活の知恵に基づいた「食べ合わせの知恵」も、癌予防の食生活を考える上で有用です。

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