乳がんに対するCoQ10の治療効果

トピックス16で『癌の予防や治療におけるCoenzyme Q10 (CoQ10)の効果』について解説しました。

CoQ10には、抗酸化作用や免疫力を活性化する効果があり、癌患者ではCoQ10の血中濃度が低下していることが多いことより、癌の予防や治療においてCoQ10の補充は有用であると考えられています。

文献を調べると、特に乳癌において患者血中および癌組織のCoQ10のレベルが低いことや、CoQ10を大量に補充すると進行乳癌が治癒したという報告があります。
進行乳癌では1日300 mg程度のCoQ10をサプリメントとして補充することは試してみる価値があるかもしれません。以下に文献の要旨を紹介します。

1。乳癌組織では酸化ストレスが亢進しCoQ10の濃度が低下している。

Coenzyme Q10 concentrations and antioxidant status in tissues of breast cancer patients.
(乳がん患者の組織におけるコエンザイムQ10の濃度と抗酸化状態)
Clin Biochem. 2000 Jun;33(4):279-84.

(要旨)
浸潤性の乳癌で乳房切断手術を受けた21例について、乳癌組織および周囲の正常組織におけるCoQ10、抗酸化酵素のsuperoxide dismutase (SOD), glutathione peroxidase (GSH-Px), catalase、酸化障害の指標となるmalondialdehyde (MDA)レベルを測定した。
癌組織におけるCoQ10のレベルは正常組織に比べて著明に低下していた。MDA量は正常組織に比べて癌組織で高く、また、抗酸化酵素 (SOD, GSH-Px, catalase)の活性は癌組織において増加していた。
これらの結果は、癌組織では活性酸素の産生が増加しており、それに対応して抗酸化酵素の活性が上がり、CoQ10が消耗されていることを意味している。癌組織内において抗酸化酵素の活性が高いことは、発癌物質による障害を高め、抗癌剤の効き目を弱める可能性がある。
CoQ10の補充は、乳腺組織におけるCCoQ10の保護作用を促進すると考えられる。

2。CoQ10の補充で進行乳癌が消失した例が報告されている。
Progress on therapy of breast cancer with vitamin Q10 and the regression of metastases.
(CoQ10による乳癌治療と転移の縮小に関する研究の進展)
Biochem Biophys Res Commun. 1995 Jul 6;212(1):172-7.

(要旨)
CoQ10治療によって腫瘍が完全に消失した2例の乳癌患者の例を1993年に報告した。
標準的治療を受けながら390 mgのCoQ10の併用で進行乳癌に著効のあった3例について報告。
肝臓に多発性の転移を認めた44歳の患者では、癌が消滅し、どこにも転移巣が見つからなくなった。
49歳の患者では390 mgのCoQ10を服用した結果、6ヶ月後には胸腔の癌が消滅した。
75歳の患者では、癌組織の切除のみ受けた後に390 mgのCoQ10を服用することによって転移が消失した。
これらの患者では血中のCoQ10の濃度は1 micrograms/ml以下のレベルから3 micrograms/ml以上に増加した。

Partial and complete regression of breast cancer in patients in relation to dosage of coenzyme Q10.(CoQ10投与による乳癌の部分および完全退縮)
Biochem Biophys Res Commun. 1994 Mar 30;199(3):1504-8.

(要旨)
32例の乳癌患者を抗酸化剤、脂肪酸、90 mgのCoQ10で治療した。32例中6例では腫瘍が部分的に縮小した。この6例のうち1例ではCoQ10を390 mgに増量したところ、1ヶ月後には触知できなくなり、さらに1ヶ月後にはマンモグラフィーでも腫瘍を検出することはできなかった。
この症例に刺激されて、非根治的切除を受けて癌が残った症例でも300 mgのCoQ10で治療を行った。3ヶ月後には患者の全身状態は良くなり残った癌も検出できなくなった。血液や免疫に対するCoQ10の様々な効果が癌の縮小に貢献したと考えられる。

3。CoQ10の抗腫瘍効果については、抗酸化作用や免疫力増強作用やその他様々な機序が報告されている。

ミトコンドリア機能に対する作用や抗酸化作用の他にも、CoQ10には多くの作用が報告されています。
たとえば、CoQ10はリンパ球機能や免疫グロブリン産生を高め、マクロファージの貪食能を高めます。心臓機能を高めるので、体力増強にも貢献します。美容や抗老化にも有効です。

以上のことから、乳癌の代替医療あるいは標準治療の補完としてCoQ10の1日300 mg程度の投与は試してみる価値があると考えられる。