血管新生阻害剤として最初に認可された医薬品:Avastin (Bevacizumab,rhuMAb-VEGF)

血管新生阻害剤としてGenentech社が開発していたAvastin (Bevacizumab, rhuMAb-VEGF)が、2004年2月26日に医薬品として米国のFDA(食品医薬品局)から認可されました。
サリドマイドも血管新生阻害作用で癌治療に使用されていますが、癌治療に正式に認可されているわけではありませんので、このAvastinが癌治療薬としてFDAの承認を得た初めての血管新生阻害剤になります。

今回は、結腸癌および直腸癌の転移に対して、未治療の患者に、静注用の5-Fluorouracilをベースにした化学療法との併用で使用する場合に限って使用が認められています。

転移している結腸・直腸癌の患者900人を対象としたフェースIII臨床試験で、Avastinと化学療法を併用したグループの平均生存期間は20.3ヶ月で、化学療法のみのグループの平均生存期間が15.6ヶ月であったため、約5ヶ月間の延命効果が認められています。

腫瘍は自らの栄養血管を新生して増大しようとします。このとき、血管新生に重要な役割をはたすのがVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor、血管内皮細胞増殖因子)で、腫瘍細胞みずからがVEGFを分泌して血管の新生を促進しています。AvastinはこのVEGFに対するヒト型のモノクローナル抗体製剤です。抗VEGF抗体によってVEGFの働きを阻害することによって血管新生を阻害し、癌の増殖や転移に対して抑制効果を発揮することになります。

血管新生を阻害することは、結腸・直腸癌の他の多くの癌でも抗腫瘍効果が期待できます。腎臓癌でもフェースIII試験でAvastin単独で有効性が認められています。その他、肺癌、膵臓癌、乳癌など多くの癌を対象に臨床試験が進められています。

一般的な副作用として、倦怠感、腹痛、頭痛、血圧上昇、蛋白尿、出血、下痢、心不全などが報告されています。さらに、重篤な副作用として、胃腸の穿孔(胃腸の壁に穴があくこと)があり、これは致命的になることがあります。臨床試験では2%にみられており、発生する時期は投与期間の長さとは関係なく、Avastin投与中の何時でも起こります。Avastin投与中に便秘や吐き気を伴う腹痛が出現したときには、胃腸の穿孔を疑う必要があります。
また、非小細胞性肺癌で、抗がん剤とAvastinの併用による治療を受けた患者では、重篤(時に致命的)な血痰(肺からの出血)が高頻度(扁平上皮癌の31%、腺癌の4%)に認められています。
血管新生を阻害することは、傷の治りを阻害しますので、大きな手術の後は少なくとも4週間は使用ができません。

この薬は、かなり有望な薬ですが、日本では未認可ですので、個人輸入になり、その値段がネックになります。
通常の投与量は、体重1kgあたり5mg(5mg/kg)を2週間に1回の投与となっていますつまり、体重60kgの人で、4週間で600mgが必要です。この量は概算で、薬剤料だけで約5000ドル、つまり約60万円が1ヶ月にかかる計算になります。癌が消滅すれば使用は中止できますが、通常はこれを継続しないと効果を持続できません。
途中で効かなくなる場合もあります。平均的に6ヶ月くらいは延命できるとして、その費用として6ヶ月で300万円というのは、かなりきびしい選択かもしれません。

結腸・直腸癌の転移の場合には、Avastin単独では、抗がん剤治療より有効性が低いことが報告されていますので、5-FUなどの抗がん剤との併用でなければ意味がありません。しかし、併用の場合には、副作用が強く、重篤な副作用も発生することがあるので、設備の整った病院に入院して治療を受ける必要があります。