「漢方薬は天然の生薬を用いるから副作用が少ない」と一般に考えられていますが、生薬の中には毒性の強いものや副作用を起こしやすいものも少なくありません。例えば、生薬成分の中にもアルカロイドといって作用の強い成分や下剤として使用される成分を含むもの、胃にもたれるものなどもあります。したがって、間違った判断で漢方薬を服用すれば、気分が悪くなったり下痢をしたりという症状が現れることがあり、場合によっては重篤な副作用を起こすこともあります。
甘草(かんぞう)は低カリウム血症やむくみや血圧上昇といった副作用が起こすことがあります。附子(ぶし)は和名をトリカブトといい、はげしい毒性をもつ成分を含み、大量を用いると死にいたることもあります。天然のものだから安全だという理屈は成り立たちません。漢方薬に含まれる成分によって肝臓の薬物代謝酵素の働きが増強されたり弱められたりすることもあり、西洋薬の効き目に影響する場合もあります。さらに、「証」があっていない漢方薬を用いるといろいろな副作用が起こります。例えば下痢傾向の人に便通をよくする生薬を用いると下痢をひどくするというような例です。
漢方薬に対する体の反応には個人差や予測できない要素もあります。生薬に対するアレルギー反応(薬剤アレルギー)によって、薬疹や薬間質性肺炎や肝炎などが起こることもあります。服用し始めてから体調が崩れたり、胃腸障害や発疹など今までと違った症状がでたら、服用をいったん中止して医師や薬剤師に相談すべきです。