第4章:がん再発予防に効果が期待できる薬草・民間薬・健康食品

 10.メラトニンの抗がん作用は臨床試験で証明されている

     【概要】
     【メラトニンとは】
     【メラトニンは抗老化ホルモン】
     【メラトニンの抗がん作用は多くの臨床試験で証明されている】
     【メラトニンの服用量】

【概要】

 メラトニン(Melatonin)は昼と夜の周期に反応して脳の松果体から分泌され、体の日内リズムを調整しているホルモンであり、不眠や時差ぼけの改善に欧米で使用されているサプリメントです。抗老化作用でも人気があります。免疫力や抗酸化力を高めると同時に、様々な機序での抗がん活性が報告されており、進行がんにおいて延命効果を示す臨床試験の結果も多く発表されています。1日10ー20mg程度の摂取(就寝時)は、抗老化作用やがん予防効果が期待できます。
メラトニンは日本ではサプリメントとして許可されていませんが、インターネットで米国から個人輸入で簡単に入手できます。ただし、免疫力を高めるため、
免疫細胞の腫瘍(悪性リンパ腫やリンパ性白血病)には使用しない方が良いと言われています。

【メラトニンとは】

 メラトニンは脳のほぼ真ん中にある『松果体』と呼ばれる、松かさに似たトウモロコシ1粒くらいの大きさの器官から放出されるホルモンです(図35)。メラトニンの原料は、アミノ酸の一種のトリプトファンで、トリプトファンにいくつかの酵素が働いてセロトニンが作られ、さらに別の酵素が働いてメラトニンが出来ます。つまり、メラトニンは体で作られている天然の成分なのです。
メラトニンはヒトの
体内時計を調節するホルモンとして知られています。暗くなると体内のメラトニンの量が増えて眠りを誘います。快適な睡眠をもたらし、時差ぼけを解消するサプリメントとして評判になりましたが、最近の研究で若返り作用や抗がん作用なども報告されて話題になっています。

図35:メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンで、体内時計の調節、免疫力や抗酸化力の増強、若返り効果、抗がん作用などがある。

【メラトニンは抗老化ホルモン】

メラトニンは子供の頃は多量に分泌されますが、思春期をすぎると急激に分泌量が減り、年齢とともにさらに減っていきます。子供は夜になると自然に眠り、年寄りは睡眠時間が短くなって不眠症や時差ボケになりやすいのは、メラトニンの量が少ないからだという考えもあります。
 メラトニンの体内量が増えれば若返られるのではという議論が起き、マウスで実験したところ、30%くらいの寿命が伸びるというデータが出ました。他にもぼけ防止やがん予防効果などの作用が認められ、アメリカでは抗老化ホルモンとして一気にブームになってしまいました。
 
メラトニンには抗酸化作用があり、活性酸素によるダメージから細胞を護ります。脳細胞の酸化を防ぐことにより、痴呆やアルツハイマー病を予防できるのではないかと期待されています。さらに、免疫力を増強し、病気に対する抵抗力を高める作用も認められています
 メラトニンの抗老化作用が人間でどの程度期待できるか議論も多くあります。ネズミで効果があっても人間に効くとは限らないからです。マスコミによる誇大広告で過大評価されている傾向はありますが、抗酸化や免疫増強の観点から健康増進のためのサプリメントとして試してみる価値はあるかもしれません。

【メラトニンの抗がん作用は多くの臨床試験で証明されている】

 睡眠障害や時差ぼけには1mg程度のメラトニンがサプリメントとして使用されますが、一日に20mgくらいのやや多い量を使用すると癌にも効果があることが多く報告されています。メラトニンは免疫力や抗酸化力を高めて癌に対する抵抗力を増強するだけでなく、がん細胞自体に働きかけて増殖を抑える効果も報告されています。
 メラトニンは、
前立腺がんや乳がんや肺がんなど多くのがんに有効という臨床試験の結果も報告されています。手術後の傷の治りを促進し、抗癌剤や放射線治療の効果を高め副作用を軽減する効果も報告されています。ただし、免疫系統の悪性腫瘍(白血病やリンパ腫)では服用しない方が良いと言われています。
 メラトニンは培養細胞を使った研究で、乳がん細胞のp53蛋白(がん抑制遺伝子の一種)の発現量を増やし、がん細胞の増殖を抑制することが報告されています。また、ガンマインターフェロンなどの多くのサイトカインの産生を調節することによって免疫細胞を活性化する効果が報告されています。
 シスプラチン治療を受けている非小細胞肺癌の63例が、1日10mgのメラトニンを摂取するか、保存的治療のみかの群にランダムに分けられて効果の検討が行われています。 保存的治療のみの患者の平均生存期間が3ヶ月であったのに対して、メラトニンを服用した患者の平均生存期間は6ヶ月であり、1年以上生存した患者は、保存的治療のみが32例中2例であったのに対して、メラトニン服用者では32例中8例でした。
 
ホルモン療法(タモキシフェン)を受けている進行した乳がん患者において、1日20mgのメラトニンの服用に延命効果があることが報告されています。ホルモン依存性の乳がんの治療のあと、再発予防の目的で抗エストロゲン剤のタモキシフェンなどが投与されますが、1日20mgのメラトニンはその再発予防効果を高める効果が期待できます。その他、メラトニンの抗がん作用は脳腫瘍における放射線治療や、肺がんや大腸がんなど、数多くの臨床試験で報告されています。

【メラトニンの服用量】

 睡眠障害や時差ぼけには1mg程度で十分です。抗老化作用やがんに対する効果を期待するのであれば、多め(1日520mg程度)に服用します。進行がんの治療では1日40mg程度の使用も報告されています。
 メラトニンを服用すると眠くなるため、日中の服用は避けるのが賢明です。精神安定剤や通常の睡眠薬を飲んでいる場合には医師に相談することが必要で、妊婦、授乳中の女性、自己免疫疾患の人はメラトニンの摂取を控えるのが賢明です。メラトニンを多量に取ると、避妊効果があると言われていますので、妊娠を望んでいる女性は、メラトニンの使用は控えた方が良いでしょう。また、子供は充分な量が分泌されているので、サプリメントは接取させないようにしてください。
メラトニンは日本ではサプリメントとして許可されていませんが、インターネットで個人輸入で入手することは簡単です。1日20mgを服用しても1ヵ月分は5000円もしません。

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