第4章:がん再発予防に効果が期待できる薬草・民間薬・健康食品
3.中国の民間薬の白花蛇舌草と半枝蓮はがんの治療や再発予防に使われている
【概要】
【白花蛇舌草は肝臓の解毒能や免疫力を高める】
【白花蛇舌草と半枝蓮の組み合わせが各種のがんの治療に使われている】
【白花蛇舌草と半枝蓮の抗腫瘍効果は動物実験で確かめられている】
【メモ:ウイルス性肝炎の肝臓がん再発予防】
【概要】
白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)と半枝蓮(はんしれん)はがんの民間療法として中国で利用されており、進行がんの治療では1日20ー60グラム程度の大量を煎じ薬として服用するとがんの増殖を抑えたり小さくする効果があります。
進行がんに使う量の1/3程度の白花蛇舌草(6ー12グラム/日)と半枝蓮(3ー6グラム/日)を煎じて毎日少しずつ飲用すると、がんに対する免疫力を高めてがん再発を予防する効果が期待できます。再発のリスクが高い場合やすでに転移がある場合には、体調に合わせて量を増やします。いずれも漢方専門薬局で入手できます。【白花蛇舌草は肝臓の解毒能や免疫力を高める】
白花蛇舌草(Oldenlandia diffusa)は本州から沖縄、朝鮮半島、中国、熱帯アジアに分布するアカネ科の1年草のフタバムグラの根を含む全草を乾燥したものです。田畑に生える雑草で、二枚の葉が対になっているためフタバムグラの名があります。
肝臓の解毒作用を高めて血液循環を促進し、白血球・マクロファージなどの食細胞の機能を著しく高め、リンパ球の数や働きを増して免疫力を高めます。各種の腫瘍に広く使用され、特に消化管の腫瘍(胃がんや大腸がんなど)に対しては比較的よい治療効果が報告されています。
脂肪肝やウイルス性肝炎やアルコール性肝炎などの各種肝障害で傷ついた肝細胞を修復する効果があり、さらに抗菌作用や抗炎症作用があるため、扁桃腺炎・気管支炎・咽喉炎・虫垂炎などの感染性疾患にも有効です。飲み易く刺激性が少ないので、中国では白花蛇舌草の含まれたお茶や煎じ薬はがん予防薬として人気を呼んでいるそうです。【白花蛇舌草と半枝蓮の組み合わせが各種のがんの治療に使われている】
半枝蓮 (Scutellaria barbata)はシソ科のScutellaria barbataの全草を乾燥させたものです。中国各地や台湾などに分布し、コガネバナ(生薬名:黄終)やタツナミソウと近縁のシソ科植物です。
アルカロイド・フラボノイド配糖体・フェノール類・タンニンなどを含み、抗炎症・抗菌・止血・解熱などの効果があって、中国の民間療法として外傷・化膿性疾患・各種感染症などに使用されています。肺がんや胃がんなど種々のがんに対してある程度の効果があることが報告されています。
台湾や中国では古くから消炎、排膿、解毒、殺菌作用、ヘビによる咬傷を治すなどの効能で、白花蛇舌草と半枝蓮が民間薬として使用されています。さらに、胃がん、大腸がん、肝がんなどの消化器系がんや肺がん・子宮がん・乳がんに対する効果も指摘されて広く使用されています。日本においても入手しやすく、抗がん剤の補助療法や進行がんの治療などに試みられることも多くなっています。
両者は通常、併用されることが多く、進行がんの治療では、白花蛇舌草は20ー60g、半枝蓮は10ー30g程度を1日量の目安として煎じ薬として使用されます。どの程度の量が適当かはあまり根拠はありませんが、例えば、白花蛇舌草(20ー60g)と半枝蓮(10ー30g)を2:1の割合で400cc程度の お湯で煎じて飲用するという方法があります。 乾燥した薬草を刻んだものに熱湯を注げばお茶のように成分が出てハーブティーとなります。一方、お湯で10分以上煮出すとさらに有効成分が抽出されて薬の効果を高めることができます。このように薬草を時間をかけて煮出した液を「煎じ薬」とか「煎じ液」と言います。お湯を注ぐだけでは十分に成分を抽出できないので、時間をかけて煎じた液を1日数回に分けて健康茶のように飲む方がより効果は高まります。
進行がんや化膿性疾患など重症の場合には、1日20ー60グラムという大量が必要ですが、がん治療後の再発予防にはその3分の1程度を飲用すればそれなりの効果は期待できそうです。再発の危険が高いとかすでに転移がある場合には量を増やすと効果を高めることができます。【白花蛇舌草と半枝蓮の抗腫瘍効果は動物実験で確かめられている】
白花蛇舌草と半枝蓮は中国の民間薬であり、がんに対する有効性は経験的なものですが、この2つの生薬の抗がん活性に関する科学的な研究が、日本や欧米の医学雑誌などにも掲載されるようになりました。
平成12年の和漢医薬学雑誌には「半枝蓮と白花蛇舌草のがん細胞増殖抑制効果と自然発症肝腫瘍マウスの延命効果」(和漢医薬学雑誌、17:165-169,2000)という題の論文が掲載されています。この研究では白花蛇舌草65gと半枝蓮32.5gを400 mlの熱水で抽出した液を作成し、肝臓がんを自然発症するマウスに自由摂取にて投与して、生存期間をコントロール群(薬を飲まなかったグループ)と比較検討しています。
肝臓がんが発病すると寿命が短くなるのですが、コントロール群の平均生存期間は55週齢であったのに対して、投与群では76週齢でした。約1.4倍に生存期間を延ばしたことになるのですが、投与群にも最終的には全例に肝臓がんの発生しているため、がん発生を防止するというより、がん細胞の増殖速度を抑えることによりがん化の進展を抑える可能性が示唆されています。
また培養がん細胞を用いた実験で、ヒトの乳がん細胞や前立腺がん細胞の増殖を抑える効果も報告しています。長期間の投与でも有害作用は認められていないため、がん再発のリスクが高い場合の予防的な投与や、がん発見当初より服用する価値があるとこの論文の著者らは言っています。
米国カリフォルニアのロマリンダ大学医学部の細菌学のWong博士らは、半枝蓮と白花蛇舌草を投与すると、マウスに移植した腎臓がん細胞(Renca細胞)の増殖が抑制され、その作用メカニズムとしてマクロファージが活性化して腫瘍の増殖を抑制することを報告しています。この報告では、それぞれの薬草の量はマウス1匹あたり1日4mgで検討されており、人の体重に換算すると1日8ー10g程度に相当します。一般的にマウスは人よりも代謝が早いので、体重あたりで換算するとマウスの方がより大量の薬が必要な事が多いので、人で1日10g程度で十分に効果が期待できると推測されます。また、Wong博士らは、半枝蓮と白花蛇舌草には発がん物質の活性化(変異原性)を抑える可能性も報告しています。【メモ:ウイルス性肝炎の肝臓がん再発予防】
目次へ戻る ホームへ戻る 4章-4へ肝臓に肝炎ウイルスが感染して炎症を引き起こす病気がウイルス性肝炎です。肝炎が長く持続(慢性化という)している状態を慢性肝炎と言い、慢性肝炎の結果、肝臓のコラーゲン線維が多くなり硬くなった状態が肝硬変です。
ウイルス性慢性肝炎あるいは肝硬変患者の肝臓は、肝臓全体が肝がん発生のリスクに曝されていて、最初に検出できたがんを根治できたとしても次々に新たながんが発生します。これを「多中心性発がん」と言い、肝臓がんが1個見つかれば他の場所にもすでにがんの芽である前がん病変や微小がんが存在するので再発しやすいということで、肝臓がんの宿命みたいなものです(図)。
肝硬変を合併している場合には、最初に見つかった肝臓がんを手術したあと3年間で3分の2の症例で残存肝に再発をおこします。早期診断・早期治療により肝臓がんの治療成績は向上してきましたが、肝臓がんの発生や再発を遅らせる手段が重要になってきました。
ウコン、莪朮、丹参、田七人参のような生薬は肝臓の血液循環や解毒機能を改善し、肝機能障害の治療に使われています。ウコンに含まれるクルクミンには、抗酸化作用や抗炎症作用などにより発がん予防効果があり、肝臓がんの発生を予防する効果も報告されています。さらに抗がん活性を持った半枝蓮・白花蛇舌草のような生薬を利用するとがんの再発を予防すること効果も期待できそうです。
肝硬変の肝臓組織と高分化型の肝臓がんにおいてCOX-2の発現が高いことが報告されており、COX-2阻害剤の肝臓がん再発予防効果が指摘されています。また、肝臓がんは血管が豊富なので血管新生阻害作用をもった医薬品やサプリメントは肝臓がんの発育を抑える効果が期待できます。実際に、血管新生阻害作用のあるサリドマイドが肝臓がんの増殖を抑える効果が臨床試験で確認されています。再発リスクの高い肝臓がんの場合には、より積極的な再発予防の対策が必要であり、抗炎症作用やCOX-2阻害作用や血管新生阻害作用をもった漢方薬や医薬品やサプリメントも有用であると思います。
図:肝炎ウイルスの感染も炎症反応も肝臓全体に起こっているので、肝臓がんが発生するリスクは肝臓全体に及んでおり、肝臓がんの発生は「多中心性」である。したがって、1個のがんをつぶしても、残った肝臓に第2、第3の肝臓がんが発生してくる可能性がある。肝臓全体に存在する「がんの芽」が大きくならないようにすることが肝臓がんの再発予防になる