抗がんサプリメントの正しい選び方、使い方


【がんの予防と治療におけるサプリメントの位置付け】

 がん予防のための食生活は『野菜や果物、豆類、など植物性食品が豊富な食事を行い、動物性脂肪や赤身の肉の取りすぎに注意する』というのがコンセンサスになっています。このような食生活を守ればサプリメントの摂取は不要であるという意見もあります。
 しかし、生体の免疫機能や抗酸化機能ががん顕在化の抑制に作用していることは多くの研究で示されており、免疫機能も体内の酸化防止の能力も20歳台をピークにして加齢とともに徐々に衰えていくという事実から、『抗酸化作用や免疫増強作用を有する食品やサプリメントを積極的に摂取することは、がんの発生予防や再発予防に有益である』と多くの研究者は考えています。
 がん予防においては、活性酸素や発がん物質の害を軽減するもの(抗酸化物質やフェースII解毒酵素誘導物質など)、免疫機能を活性化・増強するもの(ベータグルカンなどの多糖体など)、あるいはがん予防の食生活で推奨されているオメガ3系不飽和脂肪酸を含む魚油、大豆イソフラボン、食物繊維、茶カテキン、乳酸菌などを製品化したものが利用されています。
 また、がん患者さんの多くが、栄養素の不足、体力や免疫機能や抗酸化能の低下、血液循環や消化吸収機能の障害など多くの問題を抱えており、これらの問題を減らすことが、がん治療の効果を高め、再発予防に有用であることは常識的に納得できます。
 がんの標準的治療(手術・抗がん剤・放射線治療)は正常組織の障害や体力や抵抗力の低下を招く欠点があります。手術侵襲によって体力消耗や生体防御能の低下が起こり、消化器系の切除手術では、術後に消化吸収能の障害が残って栄養状態の低下が起こります。抗がん剤や放射線治療は、ともにフリーラジカルを発生し、正常組織の障害も引き起こし、DNA変異を引き起こすため発がん性があり、その結果、抗がん剤や放射線治療の晩期後遺症(副作用)としてがんが発生することもあります。体力や免疫機能の低下はがんの再発や転移のリスクを高め、感染症を引き起こす原因にもなっています。
 このようながんの標準的治療の欠点を補う目的で機能性食品やサプリメントの有用性が支持されていますがんの侵襲的治療による体力や免疫機能の低下を改善するために、栄養素の補充や滋養強壮・免疫増強・抗酸化などの作用を有するサプリメントの適切な使用は、理論的には有用であると考えられます。

【抗がん作用のある食品とは】

 野菜の摂取とがんの予後を調べた報告があります。ハワイ大学のグッドマン博士たちが675人の肺がん患者の食事と生存期間の関係を6年以上にわたって調べた結果、より野菜を食べているものは平均33ヶ月生きたのに、野菜嫌いの患者は18ヶ月の生存期間であったと報告しています。また、ブリティッシュコロンビア大学、フォスター博士ががんの自然退縮(消えて無くなること)した200人を調べたところ87 %は根本的に食事を大きく変えていて、その食事はほとんど菜食主義的な食事をしていたと報告しています。
 大豆製品の摂取量が多いとがん治療後の予後(生存期間)が良好であることも報告されています。例えば、877症例の胃がんの手術後の生存率と食生活の関連を検討した愛知がんセンターからの報告によると、豆腐を週に3回以上食べていると、再発などによるがん死の危険率が0.65に減ることが報告されています。ちなみに、生野菜を週3回以上摂取している場合の危険率は0.74に減少し、喫煙していると2.53倍に増加することが報告されています。
 このように、野菜、果物、大豆製品を多く摂取すると、がんの予防や治療に効果があることは多くの研究により支持されています。これらがなぜがんの発生や進展を抑えるかというと、それらの食品中に、がん細胞を排除する免疫細胞の働きを高めたり、がん細胞の増殖を直接抑える効果をもった成分が含まれているからです。
 アブラナ科野菜(キャベツ、ブロッコリー、ケールなど)の辛味成分であるイソチオシアン酸塩成分には体内の解毒酵素の働きや抗酸化力を高める効果によってがんの発生を予防する効果が知られています。ニンニクやその仲間(ニラ、ネギ、ラッキョウなど)のニオイの成分には強いがん予防効果が知られています。
 その他にも、ショウガの成分のジンゲロールやショウガオール、香辛料のターメリック(ウコン)に含まれるクルクミン、きのこ類に含まれるβグルカンという多糖体、大豆のイソフラボン、緑茶のカテキン、ブドウやベリー類に含まれるアントシアニンやアントシアニジンなど、がん予防効果がある野菜や果物由来の成分は数多く知られています。みかんやレモンといった柑橘類には、精油のリモネン、フラボノイドのヘスペリジン、カロテノイドのベータ・クリプトキサンチン、水溶性食物繊維のペクチン類など作用メカニズムの異なる様々ながん予防物質が見つかっています。 
 食事によるがん予防を目的としたプロジェクトにアメリカのデザイナーフーズ・プログラムがあります。デザイナーフーズとは「がんの予防のためにデザイン(設計)された食品」ということです。アメリカ国立がん研究所を中心として、がんの予防に対して食品がどのような機能を果たすのかを科学的に解明することを目的に1990年にスタートしました。主として植物性食品に焦点をあてた研究が進められ、これまでがん予防に有効として40種類の野菜、果物、香辛料が発表されています(図1)。
 植物性食品だけでなく、魚油に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)、サメの軟骨や肝油、牛乳のラクトフェリン、カニやエビの甲羅から抽出したキチン・キトサン、乳酸菌などにもがんに対する効果が指摘され、抗がんサプリメントの素材となっています。


【図1】がん予防効果を持つ食品(米国のデザイナーフーズ・プログラムより)
ピラミッドの上位にあるものほどがん予防効果が高いと考えられている。

【抗がんサプリメントの種類】

 がん予防効果を持つ食品や食品成分を多く摂取することは、がんの予防や治療にプラスに働くと考えられています。このような研究の中から、「がんを予防するサプリメント」や「がんに効くサプリメント」が開発されてきました。しかし、このようなサプリメントの抗がん作用の多くは基礎研究レベルであり、人間での抗腫瘍効果が証明されているものはほとんど無いというのが現状です。中には、全く根拠のないものもあります。
 がんの予防や治療に役立つ作用としては、1)免疫細胞の働きを高めてがん細胞を排除する免疫増強作用、2)がん悪化の原因となる活性酸素やフリーラジカルを除去する抗酸化作用、3)がんを養う血管の新生を抑えてがんの成長を止める血管新生阻害作用、4)がん細胞が自ら死滅する作用を促進するアポトーシス誘導作用、5)便通を良くしたり腸内細菌の善玉菌を増やして腸内環境を良くする作用、6)不足する栄養素の補充や体の機能の活性化や調整する作用、などがあります。このような効果があればがんの予防や治療にプラスになるという観点から、数多くの「抗がんサプリメント」が開発され、販売されています。

 【表1】に日本で販売されている主な抗がんサプリメントを作用の仕方によって分類して整理しています。多様な作用を持っていて複数のカテゴリーに分類されるものもあり、中には業者が主張しているだけで十分な証拠の無い場合もありますので、あくまでも便宜上の分類です。

【表1】作用の仕方による抗がんサプリメントの分類
免疫増強作用
 免疫細胞の働きを高め 
 てがん細胞を排除する
アガリクス、メシマコブ、アラビノキシラン、AHCC
マイタケD-フラクション、キチン・キトサン、有機ゲルマニウム、霊芝、冬虫夏草、亜鉛、ラクトフェリン
抗酸化作用
 がん悪化の原因となる 
 活性酸素を除去
カロテノイド、ビタミンC、E、コエンザイムQ10、カテキン、フラボノイド、セレニウム、イチョウ葉エキス、フランス海岸松樹皮(ピクノジェノール、フラバンジェノール)
新生血管阻害作用
 がんを養う血管の新生
 を抑えて成長を止める
サメ軟骨、サメ脂質(肝油)、スクアラミン、ウコン、大豆イソフラボン
アポトーシス誘導作用
 がん細胞が自ら死滅す
 る作用を促進する
フコイダン、紅豆杉、タヒボ、環状重合乳酸(CPL)、アミグダリン(ビタミンB17)、プロポリス、ω3不飽和脂肪酸(DHA,EPA)
腸内環境改善作用
 便通の改善、腸内細菌 
 を善玉菌優位にする
食物繊維、乳酸菌製剤、酵母製剤、乳酸菌生成エキス
栄養補充・体調改善
 不足する栄養素の補充 
 や体の機能の活性化
マルチ・ビタミン・ミネラル、高麗人参、田七人参、ローヤルゼリー、核酸、青汁、クマザサエキス、クロレラ

【抗がんサプリメントの安易な利用が危険な理由】

 がん患者さんが抗がんサプリメントに飛びつくのは、西洋医学だけの治療に不安を感じているからです。たとえば、進行したがんで抗がん剤治療を受ける時、主治医から、「副作用が強い」「がんが縮小する可能性は2、3割」「たとえ縮小してもいずれ効かなくなる可能性が高い」「延命治療であって根治は望めない」というような正直な説明を受ければ、だれでも不安になります。また、主治医から「もう治療法がありません」と匙を投げられたとき、「はいそうですか」と簡単に納得することはできません。何か他にプラスになることは無いかと探すのは当然のことであり、そのとき「藁をもつかむ思い」で多くの患者さんは抗がんサプリメントに飛びつくことになります。
 しかし、医者の立場から、抗がんサプリメントを安易に診療に取り入れられない理由もあります。
 第一に、抗がんサプリメントの有効性の証拠(ほんとうに効くのか)や作用メカニズム(なぜ効くのか)が不明なものが多いことです。通常医療と抗がんサプリメントを組み合わせた場合の客観的なデータが乏しいため、理論的あるいは経験的な有用性だけでは、その併用を積極的に勧めることは困難です。西洋薬と漢方薬や健康食品などとの相互作用が十分検討されていないことが使用を躊躇させる理由となっています。信頼できるデータや情報がないから、医者の責任で助言できるのは限界があり、効果や安全性について責任が持てないという理由で、医者が抗がんサプリメントに消極的になるのは仕方がない事なのです。
 健康食品やサプリメントが西洋薬の効き目を弱めたり、副作用を強める場合があります。抗がんサプリメントに固執して手後れになったり、その使用によって病気が悪化することもあります。がんの種類や治療の状況や病状によっては、使ってはいけない抗がんサプリメントもあります。しかし患者さんが口コミや販売業者の宣伝から得ている情報は、良い面ばかりが強調されていて、副作用などマイナス面が隠される傾向にあります
 免疫力を高めることをうたい文句にしている健康食品(アガリクス、メシマコブなど)や、高麗人参のような滋養強壮剤を含む漢方薬を、がんの患者さんが使用して、かえってがんが悪化したという体験談を聞くことがあります。このような例は、因果関係を証明することが難しいので報告されることは少ないのですが、「服用してがんが悪化した」という体験談が数多く寄せられるとそれなりに信ぴょう性があります。
 滋養強壮や免疫力増強を目的とした抗がんサプリメントは、抗がん剤のようながんを攻撃する治療と併用する場合や、がんの発生を予防する目的には有効かもしれません。しかし、体の中に大きながんがあるときには、がん細胞の増殖を抑える配慮を行わずに、単に体力や免疫力の増強だけを短絡的に考えると、がん細胞の方にも力を与える結果になるような印象を持っています。
 「体力や免疫力を高めることはがん治療にプラスになる」ことは間違いないのですが、体力や免疫力を高めるときに「がんを悪化させる場合もある」という点も頭にいれておくことが重要です。


【次第に明らかになってきた抗がんサプリメントの問題点】

 ここ十数年間、多くの抗がんサプリメントがもてはやされ、がん治療に突破口をあけるのではないかと期待されてきました。しかし、その実力が明らかになるにつれ、最初の期待感は次第に薄れ、その限界や闇の部分も議論されるようになりました。その有効性に疑問が出され、いんちきや誇大広告による被害も目立つようになり、過大な期待感に乗じて多くのがん患者を騙すようなビジネスも横行しています。薬事法違反による逮捕者や、被害を被ったがん患者の報告は後を断ちません。
 がん告知が一般化してがん患者や家族は自分でがん情報にアクセスするようになり、一方で標準治療の限界や欠点が具体的に議論されるようになりました。その結果、がん患者の弱味につけ込む抗がんサプリメントなどの代替療法が当然のごとく現れてきました。がんの代替医療や統合医療という大義名分を盾に、医療関係者や研究者や企業などが結託し、抗がんサプリメントを主体とするがんビジネスは次第に巧妙化し、エスカレートしています。
 がんの統合医療とは、がん細胞を取り除く治療には主に西洋医学による標準治療を用い、治癒力や体力、免疫力を高めるために民間療法や伝統医療などの補完代替医療を合わせて患者を治療することです。統合医療が、より効果的ながん治療とQOL向上の実現において有用であるという意見がありますが、補完代替医療の有効性や安全性に関するデータが乏しいことが、統合医療を積極的に推奨できない理由になっています。
 抗がんサプリメントを紹介した出版物のほとんどは、抗がん剤をはじめとする通常医療の限界を指摘したうえで、自分たちが販売する抗がんサプリメントが、いかに優れているか、どれほどすばらしい効果をあげているか、都合のよい事例ばかりを集めて、良い面ばかりを強調しています。しかし、そのような抗がんサプリメントの中で、がんに対する治療効果が科学的に証明されているものは極めてわずかです。また、がんの種類や治療の状況によっては使ってはいけないサプリメントもありますが、そのような情報はほとんど患者側に伝わっていません。
 わらをもすがる思いで、「がんが治る」という宣伝に望みを託してしまいがちですが、そのような宣伝を行っているものが、本当は利用してはいけないサプリメントの場合が多いのです。たとえウソと判っていても「がんが治る」という宣伝に期待してしまうのが人情であり、そこに、がんの代替医療が健全化できないジレンマの原因があります。
 がん患者の半数くらいが健康食品を利用しているという調査結果が報告されています。一方、全国の臨床腫瘍医のアンケート調査では、8割以上ががんで使用される健康食品類には有効性が乏しいと考え、抗がん剤との相互作用を危惧しています。抗がんサプリメントというのは、患者側の期待に反して、医学的には極めて問題点が多いという点を、まず理解しておくことが大切です。

【動物実験で効果があっても、人間のがんを治せるとはいえない】

 がんに効くかどうかを研究するときの研究手段として「in vitro」と「in vivo」の方法があります。「in vitro」とは「試験管内での研究」であり、培養したがん細胞に薬を添加して効果をみるような実験です。一方、「in vivo」というのは「生体内での研究」という意味で、動物や人での効果をみる研究ですので、in vitroの研究に比べればその効果はより現実に近いと言えます。
 「in vitro」の研究方法は薬の作用機序を解明する上では有用な研究手段ですが、健康食品ががん細胞を殺すかどうかという実験ではあまり当てにならないことがあります。その理由は、健康食品や漢方薬を口から取り入れたときには、腸内細菌や肝臓における代謝をうけて違う物質に変換されて体内で働いている場合が多いからです。また、生理的に達しうる血中濃度よりかなり高い濃度で検討される場合にはその効果自体が生体では起こりえない可能性があります。
 「in vitro」の実験でがん細胞を殺すという結果が出ても、それが体内にはほとんど吸収されないのでは意味がありません。茶葉のカテキンや植物のフラボノイドなどのポリフェノール類は、健康食品として多くの生理活性が報告されていますが、このようなポリフェノール類の吸収や代謝や安全性についてはまだ十分に解明されているわけではありません。ポリフェノールの研究者の間では、「in vitro(試験管内)の研究で評価された様々な生理活性の中で、その有効濃度から推察すると、in vivo(生体内)で起こりうるものはほんのわずかである」という意見が多く出されています。血中で最大でも数マイクロMレベルにしか達しない食事由来のポリフェノールは、高濃度で存在し得る口腔や消化管以外では、効果が期待しにくいのはないかという意見もあります。いろいろと提示されているポリフェノール類の健康作用も、かなり過大評価されているようです。
 ネズミにがんを植え付けて、ある健康食品を食べさせたところ、がんの増殖が抑えられたり延命効果があれば、その効果は生体内で証明された事になり、現実的な効果といえます。しかし、ネズミで効いたからと言って、人間でも期待できる効果であるという保証はありません。
 実験で使用するネズミ(マウスやラット)は遺伝的に同じ「系統」を使います。ネズミの系統には多数あり、その中には免疫学的にも性質の異なるものが数多く知られています。あるネズミの系統を使って、ある健康食品で免疫力が上がっても、別の系統のネズミを使えば効果が現れないこともあります。どの系統のネズミを用いるかによって実験結果が逆になる場合もあります。口から取り入れた物質の吸収や代謝が、人間とネズミではかなり異なる場合もあるので、ネズミで効いても人間には全く効かない場合もあります。
 もう一つ、ネズミを使った実験で気になるのは、エサが「必要最低限」の栄養素を配合した飼料を使用していることです。これは、実験結果を均一にするために必要ですが、抗腫瘍効果を際立たせる作用もあるのです。例えば、食物繊維の抗腫瘍効果を検討するときに、食物繊維が普通に含まれているエサを基礎飼料にすれば効果は出にくくなります。
 つまり、ネズミの実験とは、ある特殊な遺伝傾向(体質)や免疫システムをもった人間に、必要最小限の栄養素だけを含む制限された食事をしている状況で検討しているのと同じなのです。いろんな食品成分を取っていて、多様な体質や免疫力をもった人間の場合には必ずしも当てはまらないことも多いのです。
 抗がんサプリメントの宣伝で「がんに効く」とされる根拠のほとんどが試験管や動物実験レベルです。もちろん、人間での臨床試験は倫理的な問題もあって、がん治療の場合は極めて困難であることは確かです。しかし、人間での効果が確かめられていないのに、試験管や動物実験レベルの結果だけで、「人間のがんに効く」と思い込ませるような表現で宣伝している製品が多いので、注意が必要です。

【「抗がんサプリメントには副作用がない」というのは誤り】  

 薬剤が原因で肝臓に障害を発生する病気を「薬物性肝障害」と言います。作用の強い化学薬品はその毒性によって肝機能を障害する場合がありますが、薬品の成分に対して抗体ができてアレルギー機序で肝臓障害を引き起こす場合も多く、作用の弱い薬でも肝障害は発生します。
 2002年の夏には、中国製「痩せ薬」による肝臓障害が多数発生し、死亡例も出て問題になりました。この問題を受けて2002年秋に日本肝臓学会が行った調査によると、1年間に診断された薬物性肝障害1016例のうち、健康食品や民間薬が約3分の1を占めていました。抗がんサプリメントの代表であるアガリクスの服用によると思われる重篤な肝障害の症例が、医療機関から時々報告されていますが、軽度の肝機能障害の例を含めると、アガリクスによる肝障害はそれほど稀ではありません。
 漢方薬は西洋薬に比べて「効き目が穏やかで、副作用も少ない」という特徴があります。しかし、まったく副作用が無いわけではありません。モルヒネやジギタリスやアトロピンのように強い薬効と危険な副作用を持った西洋薬ももとは薬草から抽出・分離されたものです。そういうことを考えただけでも天然物だから安全だとは絶対に言えないのです。アレルギー性の肝炎や膀胱炎の報告も数多くあります。
 日本で使用されている生薬は、漢方に経験の深い医師や薬剤師の処方であれば、薬効に起因する副作用の多くは避けることができます。漢方の長い歴史の間で危険なものはほぼ淘汰されて、現在日本で使われているものはルールに従って使えば安心であることは間違いありません。しかし、体力や体質を無視して使用すると副作用が結構でてきます。高麗人参や冬虫夏草のような滋養強壮薬は、人によっては血圧の上昇やむくみなどの副作用が起こることが知られています。
 漢方薬を中国など外国からみやげで購入したり個人輸入で入手している人も多くいますが、中国や東南アジアなど薬の規制が不十分な国からの製品には注意が必要です。その理由は、漢方薬の中に西洋医学で使用する医薬品成分が混入されていたり、有害な成分を含む生薬が規制されていないからです。
 糖尿病に効くという漢方薬に西洋医学で使用する血糖降下薬が混入されて、それを飲んだ人が低血糖をおこして死亡する事件もありました。アトピーに効く漢方薬にステロイドが入っていたり、痩せる漢方薬に食欲減退作用のある麻薬類似の医薬品や甲状腺ホルモンが混入されていたなど、その例は多数報告されています。「がんに効く」という外国から購入した漢方薬の中に、医薬品の抗がん剤が含まれている可能性がゼロとは断定できないのです。
 カリフォルニア衛生研究所のコウ博士が、カリフォルニアで中国の漢方薬を調査したところ、鉛・ヒ素・水銀などの重金属の含有量が非常に高かったという報告があります。重金属で汚染された薬草を服用すれば、体の免疫力や抵抗力を障害してがんを促進することにもなります。鉛やヒ素は発がん性もあります。食品や医薬品に対する規制や管理が不十分な国から輸入された健康食品は、かなり危険な成分も入っていることを認識して置く必要があります。
 中国の漢方薬では、日本では使用が禁止されている毒性の強いもの、発がんプロモーター活性を持つものなどが使用されている場合もあるので、成分がはっきりしていない場合には安易な使用は危険です。例えば、アリストロキア酸はアリストロキア属の植物に含有される成分で、腎障害を引き起こすことが知られています。現在、日本においては、医薬品として承認許可を受けた生薬及び漢方製剤にはアリストロキア酸を含有するものは製造・輸入されていませんが、中国ではアリストロキア酸を含む生薬も規制されずに使用されており、中国製漢方薬の個人使用によると疑われる腎障害が報告されています。
 どのようなものが入っているのか判らないようなものは、むやみに使えば体に悪い影響が出て、がん治療にとってマイナスになることもあります。漢方薬が西洋薬の効き目に影響する場合もあります。もし、西洋薬と併用して漢方治療を行うのであれば、使っている生薬が明らかであることと、西洋薬と併用した場合の相互作用について知識のある医師や薬剤師の指導をうけながら行う方が安全です。

【過度に効果を期待しない】

 錠剤やカプセルのような剤形は、かつては医薬品的形状とされていましたが、最近では健康食品でも錠剤やカプセルのものでも許可になっています。しかし、健康食品やサプリメントであっても、錠剤やカプセルになっていると、多くの人は医薬品と同じような過度の期待をもってしまいます。
 例えば、お茶にはがん予防効果が報告されており、日頃からお茶を1日に10杯以上多く飲用する人はがんの発生が少ないという研究結果があります。このような研究結果を元に、お茶のエキス、特に抗がん作用が指摘されている茶カテキン類を抽出して錠剤やカプセルにした抗がんサプリメントが販売されています。
 普通に飲用するお茶の場合は、「咽を潤す」とか「香りを楽しむ」といった目的が中心であって、健康増進やがんの予防の目的で飲用するという人はほとんどいないと思います。しかし、お茶エキスが錠剤やカプセルになると、その服用目的は、抗菌作用やがん予防など、成分の効能に基づいたものになります。
 がん予防効果が指摘されている食品成分として代表的なものに、アブラナ科野菜(キャベツ、ブロッコリー、ケールなど)のイソチオシアン酸塩成分やジインドリルメタン、ニンニクやその仲間(ニラ、ネギ、ラッキョウなど)のイオウ化合物、ショウガの成分のジンゲロールやショウガオール、ターメリック(ウコン)に含まれるクルクミン、大豆のイソフラボン、柑橘類のリモネン、ヘスペリジン、ベータ・クリプトキサンチン、魚油に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)、牛乳のラクトフェリン、カニやエビの甲羅から抽出したキチン・キトサン、など数多く列挙することができます。
 このような食品を日頃から多く食べることは、がんの予防に寄与すると考えられています。そして、その活性成分を抽出して濃縮した錠剤やカプセルが、抗がんサプリメントとして開発されています。たしかに食品成分として、がん予防効果が期待されているのですが、錠剤やカプセルになると、がんを縮小させるような効果があるのではないかと期待してしまいます。宣伝する方も、そのような期待感をあおるような広告を行ないます。
 しかし、医薬品と異なり、その効果については証明されているわけではありません。錠剤やカプセルのような医薬品の形状に似ていることによって、多くの人が医薬品と同じような効果を期待しているように思います。抗がんサプリメントは、その服用でがんが縮小するというような過度な期待をもつのではなく、その一歩手前である免疫力や抗酸化力のアップ程度の期待にとどめることが肝心です。錠剤やカプセルだからといって医薬品と同じような過度の期待をもつことは禁物です。

【抗がんサプリメントの正しい選び方、使い方】

 がんの予防や治療において、標準治療や食事療法をサポートするという観点から、適切なサプリメントの利用は有用であると考えられています。しかし、がん治療中のサプリメントの使用には、医薬品との相互作用や、がん病態に悪影響を及ぼす場合もあることなど、様々な問題点が指摘されています。がんの予防や治療においてサプリメントを利用する場合には、その有用性だけでなく、注意点や問題点についても十分に理解する必要があります(表2)。
 抗がんサプリメントの宣伝には良いことばかりが強調されています。そのような誇大広告や宣伝文句に騙されないための知識もまとめています(表3)。さらに詳しい解説は、それぞれのリンクを参照して下さい。

【表2】がんの予防や治療の目的で利用されることが多いサプリメントの正しい使い方
サプリメントの種類 使用する上での注意
マルチビタミン・ミネラル
(カロテノイド、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、セレン、亜鉛など)
マルチ・カロテノイド、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、セレン、亜鉛などをがんの発生予防や再発予防の目的で利用するときには、これらの多種類のビタミンやミネラルをバランス良く複合したサプリメントを適量補充すること。単独での摂取や過剰摂取は勧められない。
がん治療中は、不足しがちなビタミンやミネラルを補充することは大切だが、過剰な摂取は治療を妨げる場合もあるということを認識しておく。(詳しくはこちらへ
キノコやベータグルカン
(アガリクス、メシマコブ、アラビノキシラン、AHCC、マイタケD-フラクション、霊芝、冬虫夏草、など)
日頃から免疫力を高めておくことは、がんの発生や再発の予防、感染症に対する抵抗力の増強という点において有用。がん治療中の日和見感染症の発生予防に効果が期待できる。
しかし、がんを縮小させるような効果は人間では証明されていない。また、がんの種類や状況によっては、がんを悪化させる場合もある。
ベータグルカンという成分名とその含量だけでは抗腫瘍効果の根拠にはならない。商品レベルでの有効性や安全性のデータをもった商品を選択することが大切。(詳しくはこちらへ
大豆イソフラボン 乳がんや子宮内膜がんや子宮筋腫が存在する場合や、それらの治療後は、大豆イソフラボンを利用したサプリメントは勧められない。これらの腫瘍の進展や再発を促進する可能性がある。
前立腺がんや胃がんなど多くのがんの発生や再発を予防する効果が報告されているが、大豆イソフラボンの腸内細菌による代謝や体内での生理活性など不明な点も多くあり、人間でのがん予防効果の証明はまだ十分ではない。大豆イソフラボン単独の検討では、発がんを促進する作用を示唆する報告もある。
がん予防の観点からは、大豆イソフラボンのサプリメントより、大豆食品(納豆、豆乳、みそ、豆腐などの)を多く食べる方が好ましいという意見もある。大豆にはイソフラボン以外にも、フィチン酸、プロテアーゼインヒビター、サポニン、フィトステロールなどがん予防効果が報告されている成分が多く含まれており、これらの総合的な効果ががんの予防や治療に役立っているという指摘もある。(詳しくはこちらへ
オメガ3不飽和脂肪酸
(ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸など)
1日に1〜2gのDHAの摂取はがん予防や再発予防の目的で有用と考えられている。ただし、 DHAやEPAは過剰に摂取すると、血液凝固能が低下して出血しやすくなる副作用があるので、手術や抗がん剤治療中の場合は、過剰摂取に注意が必要。(詳しくはこちらへ
サメ軟骨、サメ肝油 サメ軟骨粉末やサメ肝油には十分な抗腫瘍作用は期待できないが、それらの中に含まれる血管新生阻害成分を濃縮したサプリメントには、がん治療への応用が期待できる可能性が残っている。ただし、抗腫瘍効果を示すほどの血管新生阻害作用が存在する場合には、妊娠する可能性のある女性、手術前後、虚血性心疾患などの場合には使用は勧められない。(詳しくはこちらへ
ポリフェノール類
(フラボノイド、茶カテキン、イチョウ葉エキスなど)
野菜や果物に含まれる様々なポリフェノール類を食事から摂取することは、がんの予防や治療に役立つ。しかし、精製した単一成分を大量に摂取することは、安全性の問題などから勧められない。動物実験で示されているような抗腫瘍効果が、安全性を保証できる摂取量において人間で期待できるという証明はまだ不十分。単一成分での過剰な摂取は肝臓障害や発がん促進の可能性も指摘されている。食品に近い形のポリフェノール含有サプリメントが望ましい。(詳しくはこちらへ
高麗人参、紅参、田七人参、アメリカ人参など がん治療における消耗した体力の回復を促進するために使用できる。エストロゲン作用があるため、ホルモン依存性の乳がん患者には勧められないという意見がある。薬物代謝酵素への影響を指摘する意見もある。(詳しくはこちらへ)
ニンニク、生姜 ニンニクや生姜は、過剰でなければ、特に問題はない。しかし、ニンニクや生姜の他に、大量のビタミンCやE、植物フラボノイド(イチョウ葉エキスなど)、魚油のドコサヘキサエン酸(DHA)やサメ肝油なども、血小板の働きを抑えて血液凝固を妨げる可能性が報告されている。これらを併用している場合には、個々のサプリメントが適量であっても、出血のリスクは高まる可能性があるので、他にどのようなサプリメントを服用しているか、総合的な判断も大切。(詳しくはこちらへ)
漢方薬・薬草・ハーブ類 栄養補助を主体として食品系のサプリメントと異なり、明らかな薬効成分を含有する漢方薬や薬草を安易に使用することは、様々な問題を抱えているがん患者の場合には勧められない。漢方薬やハーブの知識と、がんの病態や治療に関する知識を持っている医師や薬剤師の指導のもとに使用すべき。(詳しくはこちらへ)
がん細胞にアポト−シスを誘導するというサプリメント
(フコイダン、紅豆杉、タヒボ、環状重合乳酸、アミグダリン、プロポリス、ω3不飽和脂肪酸、マイタケ-D-フラクションなど)
がん細胞にアポトーシスを誘導することは、通常の抗がん剤の作用にも類似するため、安全性や慢性毒性に関するデータを持っていない場合には危険。活性成分の血中濃度や代謝に関するデータがないものは信頼できない。培養細胞の実験でアポトーシスを起こす濃度と、内服して血中に達しうる濃度に整合性があること、動物実験での有効性と安全性のデータがあるものを選択することが大切。培養がん細胞を殺しても、体内に吸収されて、血液内でがん細胞を殺せる濃度にならなければ意味がない。(詳しくはこちらへ)
食物繊維
(水溶性食物繊維、キチン・キトサン、フコイダンなど)
食物繊維の健康作用は広く認められているが、がんに対する効果は過大な期待はできない。ミネラルなどの他の栄養素や医薬品などを吸着して便と一緒に排泄する場合もあるので、サプリメントとして食物繊維を取る場合は注意が必要。
詳しくはこちらへ)
その他 メラトニン、核酸、L−カルニチン、プロバイオティクス、スルフォラファン、ジインドリルメタンなど(詳しくはこちらへ)

【表3】抗がんサプリメントでよく使われる宣伝文句の注意点
宣伝に使われている効能・効果 サプリメントの例 問題点や注意点
免疫力を高めればがんは治る アガリクス、メシマコブ、アラビノキシラン、AHCC、マイタケ-D-フラクション、霊芝、冬虫夏草など 免疫細胞の賦活作用を有するサイトカインの産生を増強するので、悪性リンパ腫やリンパ性白血病などリンパ球系の悪性腫瘍に悪影響を及ぼす可能性がある。
炎症性サイトカインやプロスタグランジンや活性酸素の産生を促進して、炎症の増悪や、状況によってはがん細胞の増殖促進の原因となる場合もありうる。がん性悪液質を増悪させて体力を消耗させる可能性もある。
自己免疫疾患や糖尿病を悪化させることがある
アガリクスなどで肝臓障害が発生した例が報告されている。
抗がん剤や放射線治療の副作用の原因となる活性酸素の害を取り除く カロテノイド、ビタミンC、E、コエンザイムQ10、カテキン、フラボノイド、セレニウム、イチョウ葉エキス、ピクノジェノールなど 抗がん剤や放射線治療の効果を妨げる可能性を指摘する意見がある。
ただし、副作用を軽減し抗腫瘍効果を増強するという意見もあり、現時点ではコンセンサスは得られていない。しかし、抗がん剤や放射線の治療中は、抗酸化作用をもったサプリメントを多く摂取するのは勧められない。抗酸化成分を多く含む野菜や果物を食事から多く摂取することは問題ない。
ビタミンCやビタミンEやフラボノイド類は血小板凝集を阻害して出血のリスクを高める可能性がある。手術前や、血小板減少する抗がん剤治療中は注意が必要
イチョウ葉エキスは薬物代謝酵素を阻害して抗がん剤の効き目を高め、副作用を増強する可能性が報告されている
体力を高めて抗がん剤の副作用を軽減する ニンニク、高麗人参 抗がん剤を代謝する薬物代謝酵素に影響して、抗がん剤の効き目や副作用に影響する可能性がある。
ニンニクは血小板凝集を阻害して出血のリスクを高める可能性が指摘されている。高麗人参はワーファリンの効き目を弱めることが報告されている
がん細胞が自分で死滅するアポトーシスを誘導する フコイダン、紅豆杉、タヒボ、環状重合乳酸、アミグダリン、プロポリスなど 培養細胞に添加してアポトーシスを起こしても、人間の体内のがん細胞に効くことにはならない。
フコイダンのように腸管からほとんど吸収されないのにこのような宣伝が行われているものもある。体内に吸収される場合も、がん細胞を殺す量を摂取すれば、抗がん剤と同じような副作用がでるはず。
血管新生を阻害してがん細胞を兵糧攻めにする サメ軟骨、サメ肝油 血管新生阻害作用があるものは、妊娠中、手術前後、虚血性心疾患がある場合には使用しない方が無難。
抗酸化力を高めてがんを予防する ベータカロテン 喫煙者では肺がんや前立腺がんの発生を促進する。薬物代謝酵素のCytochrome P450を誘導して発がん物質の活性化や酸化ストレスの増大の原因となる。喫煙や飲酒と相乗的に作用して発がんを促進する可能性が高い。
ベータカロテン、ビタミンC、ビタミン、E、セレン、亜鉛 抗酸化性ビタミンやミネラルを組み合わせて補充することが、がんの発生や再発の予防に有効かどうかは、まだ結論がでていない。
がんの治療中や治療後の再発予防の目的で、これらのサプリメントを通常量以上に多く摂取することは勧められない。野菜や果物など食事からの摂取に心がけることが大切。
がんの発生や再発を予防する 大豆イソフラボンなどの植物エストロゲン活性をもつもの 多くのがんに対して発生予防や再発予防効果が指摘されているが、女性ホルモンのエストロゲンによって増殖が促進されるエストロゲン依存性腫瘍(乳がん、子宮内膜がん)の治療後の使用は、がんの増殖や転移を促進する可能性がある。
オメガ3不飽和脂肪酸
(DHA, EPA)
過剰摂取で血液凝固能の低下による出血の可能性がある。手術・抗癌剤治療中は要注意
アガリクス、茶カテキン、中国製漢方薬 頻度は稀ではあるが、アガリクスや高濃度茶カテキンの取り過ぎが原因を推測される肝障害が報告されている。中国から輸入した漢方薬で肝臓や腎臓の障害をきたした症例も報告されている。
抗がん漢方薬で末期がんを克服
驚異の抗がん作用を持つ漢方薬
外国からの個人輸入での漢方薬 がん治療中の漢方薬は、漢方薬に詳しい医師や薬剤師の指導のもとに服用すべきであり、自己判断で薬草や漢方薬を使用するのは極めて危険。がんへの効果を宣伝している漢方薬を、中国など外国から個人輸入で購入して摂取するのは勧められない。極めて奏功率の高い記述は誇大広告か医薬品の混入を疑う。
商品の価格が記載されていない場合は、消費者を騙す意図が疑われる。
ハーブや漢方薬の中には、薬物代謝や血液凝固に影響して、手術前後や抗がん剤治療中の注意が必要なものもある。
がんに効く脅威のキノコ
がん増殖阻止率○○%
アガリクスやメシマコブなど がん細胞を移植した動物へアガリクスなどのキノコに含まれるベータグルカンを投与すると、腫瘍が縮小する実験結果を得ることができる。しかし、その実験はベータグルカン製剤を注射で投与した場合であり、人間が口から摂取しても抗腫瘍効果はほとんど得られない。
ネズミの実験でがんが縮小しても人間では効果が見られないことは多い。
がん細胞の増殖や転移に必要な酵素を阻害する 大豆イソフラボン、ウコン、フラボノイドなど 培養細胞の実験だけの場合は、抗がん作用の証拠にはならない。培養細胞の実験で効果が認められる濃度が、人間が摂取して体内で達成できるレベルであることと、その量を摂取したときの安全性を示していなければ、ほとんど意味がない。
酵素分解による低分子で吸収力アップ キノコなどのβグルカン、フコイダン、キチン・キトサンなどの多糖体 このような製品のほとんどは、低分子にして本当に吸収が増えるのか、低分子に分解したあとも元と同じような活性が残っているのか、大量に吸収されたとして安全性に問題がないのか、という点に関して十分な検討は行われていない。
ベータグルカンが多い キノコなどのベータグルカン製剤 ベータグルカンの中で免疫増強作用のあるものは特定の構造をもつ一部のものであり、紙の原料のセルロースもベータグルカンの1種。「この製品にはβベータグルカンが○○gも含まれています」という宣伝文句があっても、そこには免疫増強作用のないベータグルカンも含まれているトリックが隠れている場合もある。
腸内環境を良くする 食物繊維、乳酸菌製剤、酵母製剤、乳酸菌生成エキス 腸内環境を良くすることは解毒機能や免疫力を高める効果は期待できるが、抗がん作用などの過大な期待はできない。食物繊維は過剰摂取で亜鉛などのミネラルの吸収を阻害する可能性が指摘されている。
気分をよくする セント・ジョーンズ・ワート 薬物代謝酵素(Cytochrome P450)やP-糖蛋白の発現を誘導して抗がん剤の効果を減弱する。
便通を良くする センナ、ダイオウ 便秘を改善することは大切だが、センナやダイオウのような大腸粘膜を刺激する下剤を長期に使用すると、大腸がんの発生を促進する可能性が動物実験で報告されている。
不足する栄養素を補充 マルチ・ビタミン・ミネラル、ローヤルゼリー、核酸、青汁、クロレラなど 食事からの栄養摂取を基本とし、不足する場合にサプリメントでの補充を考える。いろんな医薬品との相互作用が問題になることがあるので、大量摂取は勧められない。薬物代謝や血液凝固に影響して、手術前後や抗がん剤治療中の使用に注意が必要なものもある。
特定の成分だけを多く摂取することは勧められない。食品に近い製品を選ぶ方が良い。

抗がんサプリメントの誇大広告に騙されない方法はこちらをご参照下さい。


抗がんサプリメントの正しい使い方はこちらをご参照下さい。


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