第4章:がん再発予防に効果が期待できる薬草・民間薬・健康食品

 9.がん患者はCo10の血中濃度が低い

     【概要】
     【CoQ10とは】
     【がん治療におけるCoQ10使用の歴史】
     【CoQ10は組織を活性化して新陳代謝を高める】
     【CoQ10の副作用と安全性】

【概要】

 コエンザイムQ10(CoQ)は、強い抗酸化作用を持ち活性酸素(フリーラジカル)からのダメージを防ぐので、近年、美容や抗老化のサプリメントとして人気があります。CoQ10は抗酸化作用の他に、免疫力や体力の増強があり、がん患者ではCoQ10の血中濃度の低下がよくみられることから、がんの治療や予防におけるCoQ10の効果が検討されています。1日100ー200mgのCoQ10の補充は、再発予防にプラスになる可能性はあります。

【CoQ10とは】

 CoQ10(コーキューテン)Coenzyme Q10(コエンザイムQ10)の略で、別名Ubiquinone(ユビキノン)やUbidecarenone(ユビデカレノン)とも呼ばれ、体内で作られる物質です(図33)。

図33:CoQ10の化学構造

 心臓、筋肉、脳など体の全ての細胞が働くためにはエネルギーが必要です。食事でとった糖分や脂肪は体内で分解され、細胞内のミトコンドリアでATP(アデノシン3リン酸)と呼ばれる物質に変換されます。このATP産生過程で働く体内物質がCoQ10で、補酵素(酵素の働きを助ける)という働きをしています。
 
CoQ10は強力な抗酸化作用を持ち、細胞の老化の原因である活性酸素(フリーラジカル)の害を防ぎます。フリーラジカルが遺伝子の本体のDNAを傷つけることががんの発生と関係しています。またフリーラジカルの害によって組織の障害が起こると治癒力や免疫力が低下してがんが発生しやすくなります。さらに、CoQ10は免疫力を増強する作用も持っています。CoQ10を投与すると、抗体の量や、マクロファージやTリンパ球の数や活性が高まり、感染症に対する抵抗力が増強することが知られています。つまり、CoQ10は抗酸化作用と免疫力増強作用によってがんの発生や進展を抑える働きだけでなく、体の抵抗力を増して延命効果が期待できるのです。
 細胞内のミトコンドリアの中に入っていけるので、細胞の老化予防にも極めて有効な物質です。老化とともに組織のCoQ10の量が減少することが知られており、CoQ10を積極的に補充することは、老化予防と同時にがん予防にもつながります(図34)。

図34:CoQ10は抗酸化作用が強く、細胞のエネルギー産生や新陳代謝を良くするので、がん予防効果だけでなく、美容やダイエットや抗老化の効果も期待できる

【がん治療におけるCoQ10使用の歴史】

 CoQ10は1957年に発見され、翌年には化学構造が明らかになりました。がん治療への応用が検討され始めたのは1961年ころであり、それはがん患者の血中のCoQ10濃度が低いことが知られてきたからです。CoQ10の血中濃度の低下は、骨髄腫、リンパ腫、乳がん、肺がん、前立腺がん、膵臓がん、大腸がん、腎臓がん、頚部がんなどの患者でみつかりました。
 
CoQ10の血中濃度が低い乳がん患者は予後が悪いという報告もあります。CoQ10を大量に補充すると進行乳がんが治癒したという報告や、QOL(生活の質)が改善したという報告があります。
 CoQ10は細胞を活性化し、抗酸化力と免疫力を増強する効果があるので、体の「抗がん力」を高める効果が期待されています。そのため、がんの標準的治療(手術、抗がん剤、放射線治療)を行う時の補助療法として有用であると考える研究者も多くいます。
 CoQ10が免疫力を活性化して抵抗力を高めることや、その結果として、感染症やがんの発生を防ぐ効果があることが動物実験で報告されています。
骨髄での造血機能を高める作用も報告されています、
 ドキソルビシン(抗がん剤の一種で副作用として心筋障害を起こす)を投与したマウスにCoQ10を与えると、心筋障害の程度が軽くなることが報告されています。
ドキソルビシンの心筋障害に対するCoQ10の保護作用は、ヒトにおける臨床的な研究でも確かめられています。
 CoQ10がドキソルビシンという抗癌剤の心筋障害を予防する効果は確立されていますが、その他の抗癌剤治療や放射線治療との併用についてはまだ議論があります。というのは、
多くの抗癌剤や放射線はフリーラジカルを発生することによって癌細胞を殺すので、抗酸化作用やフリーラジカル消去活性を持ったCoQ10が、これらの治療の効果を弱めるのではないかという懸念も指摘されており、研究者の間でまだコンセンサスは得られていません。抗酸化剤のサプリメントが抗がん剤治療や放射線治療の副作用を軽減し、効果を増強することを主張する報告もありますが、反対意見の研究者も多くいるのが現状です。動物実験で、CoQ10を放射線治療と同時に摂取すると放射線照射の効果が減少する結果が報告されています。

【CoQ10は組織を活性化して新陳代謝を高める】

 CoQ10はミトコンドリアの活力を高めます。ミトコンドリアは細胞内のエネルギー生成工場とも言われるところです。ミトコンドリアでは細胞エネルギーの供給源であるATPを産生する過程で活性酸素が大量に発生されます。しかし、ミトコンドリアが活性酸素のダメージを受けると細胞のエネルギー供給も減ってしまいます。不足したCoQ10を大量に補給することは、ミトコンドリアの活力を高め、細胞を生き生きとさせます。細胞が活性化すると体全体の新陳代謝も促進されます。
 活性酸素によるミトコンドリアのダメージを防ぐことができないと、心臓や神経のように再生できない細胞は数が減り、心臓病や神経変性疾患の原因となります。これが、心筋や神経の障害による病気の予防や治療にCoQ10が有効である理由でもあります。
 
老化した細胞や病的な心臓ではCoQ10がかなり減少していることが知られていますので、CoQ10を補充すると心臓の働きを高め心臓機能を若返らせる効果が期待できます。また、多くの神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン)の治療にも有効であることが報告されています。
 このように、抗酸化力に加えて、細胞・組織を活性化する効果は、がんの再発予防にも有用だと言えます。

【CoQ10の副作用と安全性】

 がんの予防や再発予防の目的には1日100ー200mgが推奨されます。
 CoQ10は体内で産生される補酵素であり、かなりの大量を服用しない限り副作用はありません。 1日100 mg以上を摂取すると、人によっては軽度の不眠を感じることがあります。1日300 mgを長期にわたって摂取していると、肝細胞への毒性は認められずに、肝臓のトランスアミナーゼ(肝臓の酵素)が上昇することがあります。発疹、吐き気、腹痛が起こる事もあります。めまい、頭痛、胸焼け、倦怠感を感じる人もいるようです。
 コレステロールや血糖を低下させる薬は、CoQ10の効果を弱める可能性があります。ベータ・ブロッカー(心拍数や血圧を下げる薬)はCoQ10依存性の酵素の反応を低下させる可能性があります。CoQ10はワーファリン(血液凝固を弱める薬)やインスリン(血糖を下げるホルモン)に対する体の反応を変える可能性があります。(糖尿病の治療におけるインスリンの必要量が低下する)また、胎児や幼児に対する影響は十分に検討されていませんので、妊娠中や授乳中の方は控える方が無難です。

【メモ:CoQ10とビタミンEは若さを保ち長寿のビタミン】

 ビタミンEは脂溶性の抗酸化性ビタミンで、細胞膜の脂質の酸化を防いで細胞の老化を防ぐ効果を持っています。動脈硬化や肌の老化も活性酸素のダメージが原因であり、ビタミンEには活性酸素のダメージを防いで老化を防ぎます。
 
CoQ10もビタミンEも脂溶性のビタミンで、相互に助け合ってそれぞれの抗酸化作用を増強しています。つまり、CoQ10とビタミンEの組み合せは、細胞の老化を防ぐ最強の組み合せと言えます。
 ネズミを使った実験で、CoQ10を多く摂取させると、若さを永く保ち、年をとっても活動性が落ちないという研究結果が発表されています。CoQ10を与えられたネズミは、与えられていないネズミより長生きだという研究報告もあります。
 ミトコンドリアのエネルギー産生機能を高めるCoQ10は、運動能力の向上にも有効であることがわかり、オリンピック選手など運動競技者にも利用されています。
 ビタミンEは造血機能を高め、細胞膜の脂肪酸の酸化を防止し、血液をサラサラに保つ働きがあります。細胞のサビといわれる過酸化物質による害を無くすので、老化や癌の予防にも効果があります。
 つまり、
CoQ10とビタミンEは抗酸化作用とミトコンドリア機能の改善作用によって、老化とがんを防ぐ効果が期待できるのです。

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